野山を飛ぶように駆け抜けるトレイルランニングこそ人類進化の原点!人類はランニングマンとして誕生した!
野山を颯爽と駆け抜ける!まるで風と遊ぶかのように。
いつの間にか、野山を駆け抜けるトレイルランニングが、登山をする人々に当たり前のように、受け入れられるようになっています。ちょうどスキー場でスノボ-をするのが普通になっているように。
そのトレイルランニングの中でも、100マイル(156キロ)を走るウルトラトレイルランニングといえば、レッドヴィルでのレースが有名です。標高3,000メートルのロッキー山脈を100マイル走るというのは、どのようなものでしょうか?
3,000メートルを超える高山を走り抜ける!しかも楽しんでいるのだ。
それについて「BORN TO RUN 走るために生まれた」の著書クリストファー・マクドゥーガル氏は、その困難さをこのように表現しています。
スタート地点は飛行機が加圧を始める高度の2倍も高く、フルマラソン4回分を走る。
しかもその半分は暗闇で、800メートル登山を2回行うことになる。と……
当然完走する者よりも、リタイヤする人の多い大会です。普通ならば60マイル地点ではランナーは疲労困憊して、苦しげに走ることになります。ところが、その中を楽しげに苦も無く駆け抜けるランナー達がいました。
鮮やかな衣をまとい、山に溶けこむ民族。
山の岩と岩の隙間の洞窟に隠れ住み、スペイン人の侵略から逃げのびた人々。アパッチ族のように闘うことではなく、どこまでも走り続けることで侵入者を振り切ってしまった民族。タラウマラ族。彼らは長く隠された民族で砂漠の幽霊と呼ばれていました。
タラウマラ族の女性が鮮やかな民族衣装でカンザス州のある町をさまよっているのを発見されてから、彼女は11年間を精神病院で過ごすことになります。11年経って彼女が忘れられた言語を話していると気づく人が現れるまでのあいだ……
タラウマラ族はチアを溶かした飲み物をのみ、気がむくと一斉にどこまでも走り続けます。走ることは彼等には祭りであり、娯楽なのです。足はサンダル履きで、食べ物は豆とチア。粗末といえる食事で世界の常識を覆してしまいました。
人間は靴なしで走るように出来ている。
タラウマラ族が、サンダルで100マイル走ることが知れ渡ると、スポーツ医学やシューズメーカーに激震がはしります。
「足や膝の故障の原因は靴を履く事にある」と主張するのはハーバード大学自然人類学教授のダニエル・リバーマン博士です。靴が我々の足を弱くしたというのです。
スタンフォード大学の陸上チームの練習風景をみると、選手が裸足で走っています。世界的な名コーチであるラナナ氏は、「裸足でトレーニングすると、脚が速くなるしケガが減る」と言います。
最高級のシューズを履くとケガをする確率が123%増加するというのは、スイスのベルン大学予防医学博士のベルナルト・マルティ博士のチームの研究結果です。
自然な走りがケガを予防する。
アイルランドの理学療法士であるジェラード・ハートマン博士はその理由について、プロネーションと言って足首が内側に回転することを、悪いことだと考えていましたが、脚は本来、足首が内側に転がるように出来ている。と言います。
試しに裸足で走ると無意識に足の外側で着地し、小指から親指にかけて転がすようにして足をフラットにします。この内転によって着地のショックは穏やかになり、足の土踏まずが、縮まってアーチを描きます。
ランニング界最大の権威である心臓病学者ジョージ・シーハン博士は、そもそも踵で着地するからオーバープロネーションといって内転が大きくなり、靴の外側に大きく負荷をかけてしまうので、クッションがなければ踵で着地しないといいます。
最近のシューズが裸足の走りを再現できる方向に向かってきているのは、このような理由でしょう。裸足の反乱がおきています。
チンパンジーの踵にはアキレス腱が無い。
「人間の進化は走るためだったのではないか?」その仮説をたてたのはユタ大学の若き科学者デビット・キャリアーでした。
走り続けるために必要なものは何か?それは酸素です。酸素が足りなくなるとゼイゼイと息が切れ、走ることは出来なくなります。
人類が直立したのは、道具を使う為ではなく、胸を大きく膨らませて沢山の空気を吸う為だと考えたのです。しかしこれは奇妙な話です。人類は立ち上がることで、より遅くなり木に登る優位性まで手放したからです。
とはいえ人類の祖先ホモ・エレクトゥスにはアキレス腱があります。アキレス腱があるのは走る動物、馬や人間です。チンパンジーにはアキレス腱がありません。
チーターにはスピードはあるが、走り続けることは出来ない。
人類が登場したのは200万年前です。槍などの道具を使うようになるのは2万年前です。では人類は進化の過程で何を得たのでしょうか?200万年間も、どうやって平原で動物を捕まえることが出来たのでしょうか?
民族学では、タラウマラ・インディアンはレイヨウを、ひづめがはがれるまで追い詰めたと言われています。可能でしょうか?
少し実験してみましょう。健康な人間のランナーは平均1秒間に3~4メートル走ります。鹿が1秒に4メートル走るためには、息を切らすような駆け足が必要になります。しかし人間にとってはランニングというより軽いジョギングのスピードです。
馬が全力で走ることが出来るのは10分間で、秒速7.7メートルです。マラソンランナーは秒速6メートルですが、何時間でもジョギングできます。例えスタートで離されても、忍耐強く追い続ければ、人間の勝ちです。
人は走るために進化した。
レイヨウを死ぬまで走らせるには、全力で逃げるレイヨウを10~15キロ追いかけるだけでよいことがわかりました。人間は走りながら熱を発散できるし、1歩で2呼吸できます。しかし人間以外の全ての動物は1歩で1呼吸しかできません。しかも毛皮があり熱を発散できないのです。
さて人間の進化が走る為というのは、仮設にすぎません。仮設には検証が必要になります。これを証明したのは、「追跡の技術―科学の起源」の著者ルイス・リーベンバーグという数学者です。
彼はブッシュマンと共に追跡狩猟法を証明しようとしました。そしてデビット・キャリアーの仮説の間違いに気づきます。ブッシュマンは暑さなどにたよらなくても、いかなる気候でも獲物を追い詰めることができました。
そして槍や弓矢に頼るよりもアニマルトラッキング、動物追跡の技術こそ科学の起源だと考えます。
常に自分のスピードをコントロールする
ブッシュマンは、走る速度を完全にコントロールします。途中で猛獣に狙われた時に、全速力で逃げる余力が常に必要だからです。
ブッシュマンの狩猟では、平均して3~5時間走り続けます。これは現代のマラソンタイムとほぼ同じです。マラソンというレクレーションには理由があったのです。先史時代から続く理由です。
そして勿論ブッシュマンが走り続けることで、疲れることはありません。タラウマラ族がレクレーションとして100マイルを走るように。
ルイス・リーベンバーグはブッシュマンとのアニマルトラッキングで、ついには走ることは歩くことと変わらなくなり、1日中走り続けても、いざとなればいつでも全力で走れるようになりました。
自然は豊かさに満ちている。走るのを止めれば朽ちてしまう。
ユタの大学デニス・ブランブル教授はデビットの恩師ですが、彼は面白い話を聞かせてくれました。2004年のニューヨークシティマラソンの調査結果です。
マラソンランナーは19歳から毎年速くなり、そのピークは27歳になります。そして19歳のタイムまで落ちるのは何歳になるでしょうか?
その答えは、なんと64歳でした。信じられない気分がしますが、デニス・ブランブル教授はこう言います。「年をとるから走れないのではなく、走らないから年をとるのだ」と……
人類が走るために進化したのだとすれば、すっかり自然から遠ざかってしまった現代人も、少しは走ったり、運動したほうが良いでしょう。トレイルランニングは大自然の中を走るので、たっぷりの自然の力を取り入れることが出来ます。
ただし、脆弱な現代人で、運動が初めてという人は、いきなり裸足にならないほうが良いようです。なにしろ全く筋肉が鍛えられていないのですから、ケガをしかねません。
人類は150歳まで生きられる?チャレンジすることは出来る。
人類は150歳まで生きることが出来るというのは、染谷 光亨・染谷抗加齢研究所所長です。染谷氏は69歳にして20代の肌、骨を持つといいます。健康は人生最大の財産というのが持論で、和食を控えめに食し、プロテインは大豆から摂取してお酒も飲みません。
69歳ながらジムのトレーニング、ジョギング、自転車とスポーツトレーニングを欠かさず目標は世界最高長寿の122歳を先ず目指すといいます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/092500057/?P=1&rt=nocnt
同じように寿命はもっと長くなると主張するのは、登山家でもあり冒険家でもある三浦雄一郎氏の言葉です。三浦氏は最高齢のエレベスト登頂者であり、90歳で4度目のエレベスト登頂に挑む予定というから驚きです。
三浦氏は、高齢化の進む日本では60歳の還暦を2回祝う「大還暦の時代」がやってくると予想しているのです。そうなれば80歳などは、まだまだスタート地点だといいます。
三浦氏の合言葉は「攻めの健康があってもいい!」です。幾度もの病気を乗り越えてきた含蓄のある言葉です。ランニングマンとして誕生した私たちに相応しい言葉のように感じます。
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追跡の技術―科学の起源 ルイス・リーベンバーグ
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