- 2017-11-14
- コラム
秘密を取り除く為のコミュニケーション。Let’s Discover(カバーを取り外そう)!!
Discover「(人が未知なるものを)発見する」(研究社 新英和中辞典)
私たちは色々なものに“覆われている”。
新たな発見を探し求める時に、人は外の世界への可能性に心惹かれて“旅”に出ます。目の前に広がっている囲いの外に存在するであろう本当の自分に出逢ってみたいという衝動と共に。
それと同じ感覚を日常の中で経験することはできないでしょうか?本当の自分は既に今ここにいるかもしれません。見えない、あるいは見ようとしていないだけかもしれません。未知なるものとの遭遇の為に、ありふれた日常の中を旅することができたならば、新たな発見は今この瞬間に起こっても不思議ではないです。今ここに意識を集中させ、目の前のことにあらゆる全力を注ぎ込んでみてはどうでしょうか。日常の中に覆われている一つ一つのベールを取り除くことができれば、私たちはどこで何をしていても、新たな自分に出逢えるチャンスがあると信じています。
上司の皆様!私をもっと理解して下さい!!
一見すると同じように見える私たちですが、考え方、価値観、感受性などが全く同じという人は存在しないと思います。同じ職場で、同じような仕事をしている同僚でも、一人一人の考えや価値観は必ず違っているはずです。だからこそリーダーはその似て非なる個の集団の一人一人に寄り添う必要があります。
昨今の職場においてのコミュニケーションで効果的であると話題を集めている一つに、上司と部下との1on1ミーティングがあります。社内のミーティング(会議)と聞いて、ワクワクする人は少ないかもしれません。むしろ惰性で会議を行っていたり、自分の意見を聞いてくれないといったネガティブな感情を持っている人が多くを占めるのではないでしょうか?自分の内に秘めた想いをミーティングで吐露することができ、上司の人がその想いを理解して、一緒に未来へ歩んでいけたならば、仕事に対する姿勢や上司や会社に対する信頼感は大きく変わってくるでしょう。
親の介護、母親としての働き方、男性の育児参加、過労死、残業問題、幸福感の変化etc.留まる事を知らない“変化”と“多様性の拡大”を続ける昨今において、個々にフォーカスしたコミュニケーションの価値は高まる一方のように感じます。
優秀な人ほど気にかける必要がある
「あいつは何も言わなくても、自主的にやる気を持って働く」
組織の中において上位の2割の人は“優秀層”と呼ばれています。そして、中間の6割は上位の人たちに影響を受けやる気を出し、残りの2割は生産的な働きをしないとされています。世間に広く知れ割っている2:6:2の法則です。株式会社サーバントコーチ代表取締役である世古氏の著書「シリコンバレー式最強の育て方」によると、この優秀なセルフスターターの社員こそ実は構ってほしいのです。米国のシリコンバレーでは、上司と部下が週に1回、30分〜1時間程度必ず1on1でミーティングを行っています。
厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」によると、新入社員(大卒者)の3割が、入社後3年以内に最初の会社を辞めています。またNISSAY ASSET MANAGEMENTが2017年に発表したマーケットレポートによると、2016年の転職者数は300万人を超え、2009年の320万人以来の高水準になっています。他にも、転職者数に占める35歳以下の若年層の割合がこの10年間で低下が続く一方で、大きく存在感を増しているのが中年層です。これまでの“35歳転職限界説”が崩れ去ろうとしており、どの世代においても転職可能性は十分にあると言えます。それは、会社側の視点に立つと、ケアする対象が全ての年代に広がったとも言えるのではないでしょうか?それと同時に個人の人生の視点に立つと、“自分の理想の居場所”を追い求め続けることは、特別なことではなくなってきたのかもしれません。
「おはよう。今日も愛してるぜ!」
素敵な一言ですね。
会社で上司が部下に向かって、この様なことを言うのは少々気恥ずかしいかもしれませんが、ありのままの姿を受け入れてあげることは非常に重要なことです。しかし多くの場面で、上司は部下を受け入れるだけで終わることはできません。それは親と子供の関係性と非常に似ています。上司が部下に接する時に「合理性と人情味」といったように、一見、相反する二つの性質を適したタイミングで、愛情を持って使い分けなければなりません。自己重要感を高める必要がある時は、部下を心の深い部分でしっかり受け入れて、寄り添っていくのです。そのことにより、部下の安堵感や信頼感は一気に高まるはずです。
感情と価値観を探る
仕事の話だけでは、社員一人ひとりの価値観を把握するのは難しいはずです。同じように仕事をしていても、仕事に対する考え方や、働く意義は十人十色だからです。さらに上司の前ではどうしても、部下であるという立場を考えた会話になってしまうことが多くなります。上司が気を遣って話しかけても、結局はうわべだけの会話になってしまい、コミュニケーションを図っているように見えても、実際は情報共有が行われていない事が多々あります。
それを解消する為に意図した雑談を実施する必要性があります。上司はこの意図した雑談により、人となりを理解することができ、それが相互の信頼感を深めるきっかけになります。
TV番組でお酒を飲みながら芸能人やスポーツ選手が対談を行うものがありますが、様々なトピックをざっくばらんに話をしています。その中で、全く関係のないような議題の中でも行動や思考のパターンが、仕事を行っている時に酷似している時が多くあります。仕事の話だけでは把握しにくい性格や価値観も、オフの話と組み合わす事で理解が深まる効果があるといえます。
有意注意で判断力を研ぎ澄ませる
京セラの創業者である稲盛和夫氏の書いた「京セラフィロソフィ」に有意注意の重要性を説いてあります。有意注意とは「目的をもって、真剣に意識を集中させること」を指します。物事をただ漠然とやるのではなく、日常のどんな些細なことにでも真剣に注意を向ける習慣を身につけなければなりません。稲盛氏が私淑している日本初のヨガ行者である中村天風氏は「研ぎ澄まされた鋭い感覚で迅速な判断をするためには、どんな些細だと思えるようなことでも、常に真剣に考える習慣をつけていなければならない」と同書で述べています。
とは言え、日常の中では過去、未来、そして現在の事が頭の中に混在してしまい、今に集中する事は非常に難しいと思います。稲盛氏は実際に、過密スケジュールの中で、今話している内容がそのまま頭に残ってしまい、次に会う人と話している時になかなか頭を切り替えられず、効率が悪くなることを認めています。しかし、これを防ぐ為に次の人と会う前に、今話していた内容を頭の中から全部消してしまうようにするのだそうです。そして、次の話を真剣に聞き、結論を出しては、また頭の中を真っ白にし、次の人に会うという事を常に意識して実行しています。
この習慣を上司が持ち合わせていれば、部下の「ちょっといいですか?」の一声を蔑ろにすることはなくなるのではないでしょうか?何しろ相談を持ちかけてきた話の内容が、当人にとってどれだけ重要かどうかは、会話の最初の段階では判断できないのですから、いかなる時も、今ここに意識を集中させる大切さが分かると思います。
最高の褒め方は間接的な褒め方
人は誰であれ褒められたり、承認されると嬉しいものです。特に自分が頑張っていることや意識していることを褒めてもらえると、満足感が格段に上がります。
「◯◯さんが君の仕事はいつも丁寧で、信頼出来るって言ってたよ。」
このように、本人から直接褒められるのではなく、他の人づてで褒められた経験は皆様あるのではないでしょうか。間接的に褒めてもらうことは、思っている以上に嬉しいと感じるかもしれません。裏でどのように思われているかを知ることができ、そのように言ってくれた人、さらには、それを伝えてくれた人の両方に好感を持つことが出来るのです。
最終的には「何を」を「誰が」伝えるかである
「やり方=スキル」、「あり方=人格」は氷山によく例えられます。やり方は氷山の見える部分、つまり氷山の一角にしかすぎなく、上司は最終的には見えない部分の「人としての成長」が必須になってくると思います。目には見えない部分を「心」と表現してもいいかもしれません。仏教の世界では「心が濁ると、我々が歩む人生は平らでなくなって、そのために我々は倒れてしまうであろう。その一方で、心が清らかであれば、人生という道は平らになり、安らかに生きることができるだろう」と説いています。ビジネスであろうとプライベートであろうと、目の前に起こっていることに意識を全て注ぎ込み、邪念を捨て去って情熱を燃やし続けることで、一歩また一歩、前進していけるのではないでしょうか。あなたに夢や悩みがあるように他の人にもそれらがあります。自分にとっては取るに足らないように感じることでも、部下にとっては非常に重要なことかもしれません。一人一人と向き合うことにより、価値観や考え方の違いや悩みや不安が浮き彫りになり、サポートできる点が少しずつ見えてきます。
人生に彩りを加えるコミュニケーションへ
「最近いいなって思う人いる?」
この問いかけを自部署のみならず、他部署の人にもさりげなくしてみて下さい。
自分の良いところを話すのは自慢するようで抵抗がある人も、人のことについては長々と話してくれたりします。また他のひとに視点を向けることで、視野を広げるという教育的効果もある。ポジティブ心理学では、感謝の念を抱いている時、非常に幸福感が高まって良い状態になると多くの研究で実証されています。
最終的には、上司と部下の関係を超えて、一人の人間としての付き合い方ができるようになると思います。上司も部下もそれぞれの人生を旅しています。お互いの人生に少しの彩りが加わるようなコミュニケーションに変えて、今日も日常の中に確かに存在する「未知なる自分」を発見しに、その扉を開けてみてはいかがでしょうか。