チームワークで掴んだ400mリレー五輪銀メダル 企業でこのようなチーム力を得ることは出来るのだろうか

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誰一人10秒を切れず、100m決勝に残れていない4人が、ガトリンやタイソン・ゲイという世界一を争うランナーを含め4人全員が9秒台の米国を力で打ち負かした。堂々の400m男子リレー五輪銀メダルの快挙である。

一人一人の力の比較から、世界中の誰もがジャマイカと米国の優勝争いを想像した。しかし、日本の4人は勝利を諦めなかった。勝つ方法があるはずだ、日本チームだからこそ出来る勝つ方策が必ずある。

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リレー決勝前夜、4人は互いの信頼関係の裏打ちなしには出来ない勇気ある決断をした。
「4分の1足」ぶんスタートを早める。一体何のことなのか。リレーの第2走者以降の選手は、自分がスタートする位置から逆方向に自分の靴を使って距離を測り目印のテープを貼る。前の走者がその目印に来た時に自分がスタートを切るためだ。

ほんの数センチではあるがスタートを早めることになる。その分早くスピードに乗れ、タイムを短縮できる。その分リスクも大きい。リレーはテイクオーバーゾーンというバトン受け渡し区域でバトンを渡さなければ失格となる。

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4人は仲間を信じた。前の走者が必ずバトンを自分に渡してくれる。信じてスタートを切った、気配を感じない、しかし後ろを振り向かず全力で前を向いて走る。スピードに乗る、テイクオーバーゾーンのラインが目の前に迫る、その時バトンが手に触れた。

4人の快挙は、個々の力を超えるチームワークによってもたらされた。このチームワークについて、九州大学名誉教授であり、現在は日本経済大学で教鞭をとる古川久敬教授はチームワークの3つのレベルを示している。

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最初のレベルは、メンバーの相互理解のもとに、情報共有が進み、チームの目標に向かっている状態である。そして次の段階は、最初のレベルに加えて、目標達成を目指して、自分の役割を超えた連携が取れる状態。最も高いレベル3は、メンバー間が互いに刺激し合い、新たな発想やチャレンジが起きている状態である。

古川教授はさらに強調する。過去、1970年代、80年代の右肩上がりの成長の時代においては、チームワークを意識せず漫然と日々の業務の反復と継続によって成長することができた。しかし、これからの時代はチームワークを意識しないと成長できない。レベル3のチームワークが求められる。

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これから起こる時代の変化に対応していくためには、これまでと違う行動をしなければならない。その為には新たな能力が必要になる。人が相互に刺激し合い、新たなチャレンジが起きている。結果を気にする必要などない、新たな発想、チャレンジがチームで起きていることが必要ということだ。

まさに、日本のリレーチームが発揮したチームワークがこのレベル3だ。勝利という目標に向かって、4人が互いに刺激し合い、切磋琢磨し、連携し、他のどの国のチームよりもバトンの受け渡しにこだわった。

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スポーツの世界では、チームワークのレベル差が結果に表れる。400mリレーチームは良い結果として表れ、五輪出場予選で敗退した2011年ワールドカップ優勝の女子サッカーチームは悪い結果として出た例だ。ゆえにチームワークが何かと話題に上る。
 
企業においてもチームワークの質がその企業の業績に影響することは誰もが分かっている。ところが、「成果主義」を「結果主義」と誤解している企業はなかなかチーム力が上がってこない。

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「結果主義とは、結果に意識が向きすぎ、その結果の良し悪しだけで評価してしまうこと」と先ほどの古川教授は定義している。「結果主義」におちいると、人は委縮し、不満もつのる。素晴らしいチームワークを誇っていたとしても、この結果主義に入るとチームワークも崩れてしまう。

「成果主義」で重きを置くのは、結果が出る前の段階である。結果を出す「意義や目的」をはっきりと意識するところから始まる。そして、その結果を確実に出すためのプロセスとシナリオをデザインしていく。明らかに「結果主義」とは違い、人は失敗を恐れずチャレンジする。

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この「成果主義」のもとにチーム力を高めていくには3つの要素が必要だと古川教授は説く。一つ目は、結果目標(業績目標など)である。結果主義だとここだけに焦点が当たる。

二つ目は、この結果を出すことの意義や目的をチーム内のメンバー間で共有すること。これによって、メンバーの意識が高まり、この結果を出した後のさらなる大きな成果へとつながっていく

三つ目は、この結果を出すための、プロセスをデザインすること。このデザインには2つの内容を入れ込むことが求められる。一つは、メンバーがどのような関係性を持って活動することが結果を出すために必要かをデザインすること。

二つ目は、結果を出すための活動の内容である。どのような活動を実践していけば、求める結果が得られるかをデザインすることである。

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このプロセスのデザインによって、メンバーは自信を持って活動し、さらなる成長に向かって、検証を進めることが可能になる。いわゆる、PDCAが効果的に回っていくことになる。

これからの時代、リーダーは真の「成果主義」のもとで人を育て、チーム力高めていくことが大きな役割のように思える。そしてこの為に、ビジョンを持つことが必要になるのだろう。

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~人が生きる奇蹟の組織創造を目指して~ 株式会社ワールドユーアカデミー 

「10秒切れていない4人がなぜ銀メダル」2016/8/25朝日新聞社運営 withnews
「これからの人材マネージメントへの提言」産業能率大学 総合研究所
「人的資源マネージメント意識化による組織能力の向上」(2010年白桃書房)古川久敬編著
「チームマネージメント」(2004年日本経済新聞社)古川久敬著

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