楽しく働くことで業績が上がっていく 「幸せの経営」の時代がやってきた

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慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科教授の前野隆司氏がSNS上で投げかけたところ、教授の予想を超えて大変な物議を醸した質問があります。

「会社の経営で一番大事なことは社員全員を幸せにすることである」
「会社の経営で一番大事なことは会社の利益を確保することである」

この2つのどちらを支持するか?という質問でした。

あなたが経営者であったとしたら、どちらを一番大事にしますか?

結果は、「そもそも、会社の業績が上がらなければ、社員を幸せにすることもできないだろう。だから利益の追求を最優先することで結果的に社員は幸せになる」という意見がほとんどだったといいます。

つまり、利益の確保が原因で、社員の幸せはその結果である。ということです。

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利益が先か?幸せが先か?

しかし、前野教授は言います。社員が幸せになるほど、それが原因となり,会社の業績が伸び、組織全体が強くなっていくという、逆の因果関係が成り立つことが研究により実証されている、と。

しかし、今の日本に「うちの会社は社員を幸せにする存在である」と言い切ることができる経営者は、どれ位いるのでしょうか?

また「働くことが楽しい、会社のおかげで自分は幸せだ」と思っている社員はどれ位いるでしょうか?

もし、実際に社内で常にそのような声が出るようになったとしたら、その時、会社ではどのようなことが起こっているでしょうか?業績、人間関係、社員のパフォーマンス、モチベーションはどう変わっているでしょうか?

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社員のパフォーマンスを上げる要素とは?

前野教授は幸福学を工学の視点から研究している日本の第一人者です。幸福学は、現在、世界的に研究が進められている分野であり、経営学や経済学の学会で議論されています。

今や、幸福に関する論文は『サイエンス』誌に載り、幸福を研究する学者がノーベル賞を受賞し、世界中の政府が国民の幸福度を測定し、その値を高める方法を解明しようとする時代です。経営学の本場、アメリカの経営学会でも「幸せの経営」がテーマとして独立して取り上げられるほどです。

研究によりわかってきたのは「幸福な人ほど有能な働き手である」ということです。幸せな社員は生産的であり、創造性は3倍。エンゲージメント(意欲や愛着、一体感など)も高く、上司や顧客から高い評価を受ける傾向にあり、欠勤率や離職率が低いという特徴が明らかになりました。

これらのことは「社員の幸せを第一に追求する経営が、企業の幸せにもつながる」ということを証明しています。

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研究データが「幸福な人ほど有能な働き手である」ことを示している

一方で、「日本の企業社会はいま“働く=楽しい、幸せ”と誰もが素直に思える働き方や経営・ビジネスのあり方から、あまりにも遠く離れてしまっている」と前野教授は言います。会社は社員を幸せにする存在になり得ていないのが現状です。

では、どうすれば経営者は社員を幸せにすることができるのでしょうか?また、幸せとは、どのような状態のことなのでしょうか?

まず、区別しなければならないのが、社員の幸福度と従業員満足度です。社員の幸福度を上げるために必要なのは従業員満足度だけではないというのです。

従業員満足度に関係するのは、仕事に対する満足度、人事評価、福利厚生、労働環境などの要素です。実はこれらの向上は、パフォーマンスにあまり影響しないというデータがあります。

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昇進、昇給、キャリアアップを目指し続ける先に、真の幸福があるのか?

他の研究でも、昇給、昇進、表彰といったイベントは、幸福度が長続きしないことがわかっています。持続性が低いからこそ、そこには虚しさが常に伴います。そして虚しさを拭うように、さらなる喜びを求めて稼ぎを上げ、キャリアアップを目指し続けることになります。多くの経営者の予想に反して、条件やポジションでは社員は真に幸福にはなれないということがわかります。

言われてみれば、期待をかけて昇進させても、給料を上げても、社員がこちらが思うようなパフォーマンスを発揮しない。それどころか、むしろプレッシャーでつぶれてしまった、という経験がある経営者もいるかもしれません。

真の“社員の幸福”とは、社内だけにとどまらず、人間関係や家庭環境、余暇の過ごし方などプライベートも含めた人生全般に対する充足があってこそ成立し、そこで初めて先に述べたような有能な働き手としてのパフォーマンスやモチベーションが伴うのです。

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プライベートも含めた人生全般における充足こそが、幸福感の持続の鍵

もはや、仕事とプライベートは何の関係もない、と切り離す考え方は通用しません。ワークライフバランスの改善に着手している企業も多いと思いますが、企業が社員の幸福度を高めるためには、ワークだけでなく、その家族や私生活の部分まで含めたライフの部分まで目を配り充実させることが求められているのかもしれません。

では、具体的にはどのようなことをすればいいのでしょうか?ハーバード大学心理学部教授、ダニエル・ギルバート氏によると、幸福度を高めるために必要なのは「まるで、おばあさんの説教のように聞こえる」ようなシンプルなことで、秘密などない、といいます。

必要なのは「瞑想する、運動する、十分な睡眠をとる、といういくつかの単純な行動を励行すること、そしてボランティアなど利他主義を実践すること。人脈を広げること、週二回、感謝したいことを三つ書き出し、その理由を誰かに話すこと」。シンプルすぎて、むしろ意外に感じるほどです。

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瞑想、運動、睡眠。シンプルな習慣の積み重ねが幸福感を育む

前野教授も、幸せにはメカニズムがあると主張します。教授は1500人に行ったアンケートをもとに、工学的アプローチから幸せを因子分析し、4つの因子が抽出されました。そして、その4因子をバランスよく満たしている人が、幸福度が高いことがわかりました。その4つとは

「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
「ありのままに!」因子(独立と自分らしさの因子)

というものです。

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幸せな人は、4つの幸せの因子をバランスよく満たしている

4因子について、さまざまな研究により以下のことがわかっています。

第1の「やってみよう!」因子に関しては、どんな仕事や役割でも、ただやらされるのではなく、そこに何かしらのやりがいを見つけてワクワクしながら取り組めていれば、幸福度も高まること。

第2の「ありがとう!」因子に関しては、幸せな人は信頼できる友人や同僚の数が多い傾向にあること。仕事を行う際にポジティブな感情を示す人は、親切で、同僚を助けるなど、仕事上すべきこと以上の行動をする傾向があること。

第3の「なんとかなる!」因子に関しては、穏やかでポジティブな感情の多い社員は他の社員とのコンフリクト(対立、軋轢)が少なく、仕事を辞めにくい傾向があること、楽観的なCEOはパフォーマンスが高く、経営する会社への投資のリターンも高い傾向があること。

第4の「ありのままに!」因子に関しては、働く社会人の研究によると、幸福感は本質的に価値のある経験、すなわち個人が自分自身として行いたいことと関係していること。

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日本において、幸せの経営を推進する企業とは?

日本にも同じようなメカニズムで幸せの経営をすすめている企業が増えてきていると前野教授は語ります。社員の幸せや働きがい、社会貢献を大切にしている企業に贈られる「ホワイト企業大賞」の審査員も務めている前野教授は、幸せの4因子同様に受賞企業の因子分析をしたところ「いきいき、のびのび、すくすく」という3つの因子が出てきたというのです。

自分の会社で働くことに喜びや誇りを感じると同時に、仕事を通じて毎日が充実し、休日に出勤するのが楽しみな「いきいき」因子。

会社から大切にされ、自分の努力や資質が認められている実感があり、職場で自由に発言することができ、一緒に働いている人に対して感謝をもっている「のびのび」因子。

能力を発揮し、チャレンジしがいのある仕事や、スキルや能力を伸ばす機会や風土があり、自分が目指す姿に向かっている手応えを感じ、人として成長できていると感じている「すくすく」因子。

これらの3因子からも、幸せの4因子とともに幸せの経営の一歩を踏み出すヒントを見出すことができそうです。

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幸せな社員が増えていけば、経営者自身の人生も楽しく幸せになる

幸せの経営の時代はすでに始まっています。現在、盛んに論じられているホラクラシー経営やティール型組織を実現している企業もすでに日本に存在します。

楽しく笑顔で働く幸せな社員を増やし、会社の業績も上がっていく。そんなwin-winの経営を日本に広げ、世界に発信していくことこそ、今求められている経営者のあり方であり、なにより経営者自身の人生を楽しく幸せにしてくれるのではないでしょうか。

 

 

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【参考書籍】
『幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える』前野隆司 小森谷浩志 天外伺朗(共著) 2018年 内外出版社
『幸福学』 ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(著) DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(訳) 2018年 ダイヤモンド社


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