「間違いは沈黙で伝える」勝つことなく自他の心を動かす日本の精神が世界を変える。

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「私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが兄妹として同じテーブルにつく夢である」この有名なマーティン・ルーサー・キング博士の演説は、今も世界の人々の心を揺り動かす力があります。

その演説は自分の権利を声高に主張するよりも、人々にその権利の正当性を伝えることが出来ました。それはいったいなぜなのでしょうか。現代社会では権利や意見を伝えることは、重要なスキルであるとされ、その目的でディベートというスキルも磨かれてきました。

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言い訳は潔くない

そして声高に相手を非難することのない、日本政府の姿勢はまるで弱腰外交だと嘲笑う人も多くいます。確かに外国の報道官が「卑劣な行為は明らかであり、責任は相手方にある」などと挑発的な言い方をすることも、まま見受けられます。

それを受ける日本の報道官が、「誤解を解くように、丁寧に対処したい」とか「大変遺憾であります」などと言うのを聞けば、その落差に弱腰と思えてしまうでしょう。しかしそれは、あえて敵を作ろうとしない日本式のコミュニケーションスキルだともいえるのです。

声高に正当性を訴えるよりも、人の心に寄り添うメッセージの伝え方の方が、より多くの人々を納得させ、その共感を得ることが出来ることは、先の「私には夢がある」の演説でも明らかでしょう。

日本式の交渉力は、自分の権利を高々に主張し、相手の非を切り捨てることでは在りません。相手の過ちすら受け入れる白黒をつけない解決方法と言えます。清濁併せ呑む力量を持つことが、リーダーの条件のひとつとされてきたのです。

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間違いは沈黙で伝える

日本の会社に入社したアメリカのビジネスマンの体験に、とても面白いものがあります。それに気づくのに、長い年月を費やした、というのですが、日本人は、相手が間違っている時にすぐにそれを指摘しないで、沈黙という間を使うというのです。

その事を最初に気づいたのは、コンビニで支払い金額を間違えて渡した時だったそうです。勘違いして少ない金額を手渡したのですが、その時店員が、無言であったというのです。その沈黙の間に、間違いに気づいたビジネスマンは感動したと言います。

アメリカではミスは直ぐに、厳しく指摘されます。しかし日本人は間違いを指摘しないで、それを伝えるのに、沈黙という非常に高度なテクニックをもっている、ということを知ったと言います。それ以降、会社でも会議でも、この沈黙が色々な場面で使われていることや、今まで何でもすぐに自己主張していた自分が、実は非常識であったことを知った、と言うのです。

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さりげない思いやりが街中に

駅に生け花がいけられていること、車がクラクションを鳴らさない理由、そして日本のビジネスマンが自社製品を売り込むよりも、相手の要求や想い、希望などを聞き取っていくことの方を重視していることなど、日本の文化が相手への思いやりに満ちていて、しかも当たり前のようにそれを行っていることに気づいていったそうです。

ディベートが不得手で自己主張できない、とされてきた日本人ですが、もしかしたら主張し相手を打ち負かして勝利を得るよりも、もっとずっと高度なコミュニケーションスキルを持っていたのかもしれません。

アメリカの認知心理学から発展したアサーションスキルは、冒頭でも紹介した、アメリカのあの有名な黒人指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの演説、「私には夢がある」にも影響を与えたとされています。

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相手を尊重して自己主張する

アサーションスキルの基本は、相手を尊重しながら、自分の状況を正確に伝えて、選択肢を提示するというものです。このアサーションスキルを使う為には、相手との親密な関係を築き、相手と会話するときには、相手に心地よいおまけの言葉を付け加えるという徹底ぶりです。

しかもアサーティブな考え方というのが、自分で責任をもって選択する権利を持っているということであり、極め付けは失敗する権利で、その失敗は自分で責任を持つことが出来る、としていることです。

自分で選択し、失敗しても自分で責任を持つ。この当たり前ともいえることが、権利とされている所に、アサーティブな考え方の凄みがあります。自分で選択する権利、失敗する権利、責任を持つ権利を放棄してしまっているのが、クレーマー、ストーカー、モンスターペアレントと言われる人々ではないでしょうか。

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自分の心を自分で使いこなす

失敗したのは相手の責任、おもい通りにならないのも全部相手の責任にしているのは、もしかしたら自己主張ではなくて、自分の大切な権利を放棄しているのかもしれません。アサーションスキルは弱者が権利を主張する方法でした。

奴隷の身分であった黒人にとって、自分で選択する責任を持つ事、失敗する権利を持つこと。そしてその失敗を自分の責任とすることは、とても重要な権利です。それなのにその権利を自分で放棄してしまうのは、自分で自分をコントロールできないことになってしまいます。

松下幸之助はリーダーとして戦略などよりも、もっと大切なことがあると言います。それは自分の心を使いこなすことだと言うのです。自分の心すら自分で使いこなすことが出来ない人が、他人を使いこなすことなんて出来ないといいますが、至言と言えます。

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公私混同はしない

自分の心の奴隷にならずに、自分の心の主人であることを心がけてきた日本人には公私混同はしない。と言うわきまえがありました。この公私混同をしないという、日本人にとっては、それほど珍しくもない考え方は、外国の人の目には驚くべきことのように写ったようです。

地震によって夫の遺産から高価な絵画などを失くした外国のご婦人の話を、同情を持って辛抱強く聞いていた紳士が、その外国夫人から「貴方は何か失くしたの?」と聞かれて「妻子を失くしました」と答えたというのです。しかもその返事に動転する夫人を、穏やかな笑顔で支え続けたと言います。

また身近な会社でも、自分の身内の病気や死去があっても、冷静に淡々と仕事を打ち込むビジネスマンを見ることが出来ます。直近の震災でも全てを流された会社社長が、従業員のために、黙々と再建に取り組む姿が、多くみられました。私人の情よりも社長としての責任を大事にしているのです。

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経験は最高の教師

ここには「自分らしさ」とか「自分を大事に」という自己主張の法則などよりも、ずっと信頼できる生き方があるように思います。松下幸之助がリーダーに求めた、もっと大事な事というのは、このような生き方の基本の部分を言うのではないでしょうか。

もしかしたら失敗することは、何もかも失くしてしまうことだと思っているのかもしれません。しかし失敗しない人生は、とても脆弱なものだと言います。かのイギリスの哲学者である、トマス・カーライルはこのような言葉を残しています。「経験は最上の教師である。ただし、月謝がめっぽう高い」失敗や挫折のない人生は、いざという時に弱いものです。

だからこそ失敗を他人の責任にしてしまわない強さが必要です。日本は他人の失敗をあからさまに非難しない、おおようさを持っていました。相手に恥をかかさないように、あえて自分の責任にしてしまう事すらあります。

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人情の機微を学ぼう

おおように相手を許し、相手の失敗をあからさまにしない名誉を貴ぶ気風があるからこそ、部下も上司から言われなくても、自ら仕事や責任を求めて仕事をすることが出来ます。松下幸之助は、人情の機微は教えることが出来ないから、自分で学んでいくしかない。しかし人情の機微こそが人生の根底で、最も大切なことだと言っています。

松下幸之助の言う教えることのできない、人情の機微を学ぶことこそが、ディベート力をつけるよりも、自己主張方法を学ぶよりも、戦略を立てることよりも、もっと大切なことなのではないでしょうか?

学びの途中には失敗があって当たり前だし、だからこそ失敗しても言い訳しない心持ちを持つことが大事なのでしょう。自分の責任と真剣に向かい合っていくところに、人情の機微を知る機会が多くある筈です。

アサーティブな考え方とは、元来日本人が培ってきた、謙譲の美徳の中に隠されていたのかもしれませんね。

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