マインドフルネスで心を基本設定に。「幸せは心が基本設定に戻った時に自発的に沸き起こる。」

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喜びを幸せと思い込むことはよくあります。喜びは時間、目的そして場所に左右され、その本質は経験と共に変わり消費されます。」
これは世界一幸せな人間と呼ばれるフランス人僧侶、マチウ・リカール氏の言葉です。

ビジネスにおいても、私生活においても「幸せ」は文化や時代に関係なく常に私たちの念頭にあり、誰もが手に入れたいと望み人生をかけて常に探索しているだけに、「幸せ」になるためのアドバイスはすぐ手の届くところにあり例えばグーグルだけでも「幸せ」と検索すると7500万件もの幸せに関連する何かにアクセスすることができる世界に私たちは住んでいます。

それでは、もしマチウ氏が説明するように喜びと幸せは全く別物なのであれば、誰もが求める「幸せ」とは一体何なのでしょうか。

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初めのうちは快感と脳に伝わる喜びも、時間がたつと飽きがきてしまうもの。
フロリダ州立大学の歴史家であるダリン・マクマホン氏によると私たちは「幸せ」という言葉に執着していることを指摘しており、彼によるとこの執着は多くの人が実際に幸せでないことを示していると言います。

また、カリフォルニア大学バークレー校哲学科で知覚理論を専門とするアルヴァ・ノエ教授が「人は他者によって構成される環境状況に埋め込まれて人生を送っている」と述べているように、私たちの意識は自分自身の内面に向けられるのではなく、常に周りの状況といった外的要因にフォーカスされているため、コンテクストの中で常々変化する幸せの形にとても敏感なのでしょう。

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常に変わりゆく幸せに執着すると幸せは遠ざかって行く

ある人はマジックのトリックに脳が騙されるという感覚は私たちが喜びを幸せと思い込むのと似ているといいます。

例えば、マジシャンが手品のタネから観客の目をそらしますが、実は同じ瞬間に観客の脳は既知のこととその瞬間に知覚していることを組み合わせ、不足している情報を充填し幻想を得ているといい、つまり、私たちが完全に把握していると思っている状況は脳が足りない情報のギャップを埋めて作りあげているということになるのです。(1)

この脳のユニークな働き方を理解すると、理想とされる車や家を買い、成功を求めながら「足りないもの」を埋めていくことで欲が満たされた感を味わい、「自分は幸せ」と思い込んでしまっているということに説明がつくような気がします。

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脳が自動的に補って埋めている情報をとってしまえば、実際私たちは現実のほんの一部しか認識していない。

ビジネス界だけでなく私生活においても何かをこなすスピードと効率がその人の価値を決めると言っても過言でないこの世の中で、遅れをとってはいけないと個人の意識が常に外向きになっていることは仕方のないことなのかもしれません。

しかし自分の心の状態には鈍感な今の私たちの状態は、まるで底に澱がたくさんたまっている水の入った壺をたえず揺すり続けているのと同じで、水は濁り本当に必要とされている何かは見えにくくなってしまい、多くのケースでは重要な決断を下すときに障害となってしまうのです。

「今後求められるビジネスリーダーにおける成長は彼らの自己認識から全て始まる」とインシアード(INSEAD)ビジネススクール・経営大学院のアカデミック・ディレクターであるヘンリック・ブレズマン氏が述べているように、まず私たちは意識を内面に一旦向けてあげれる心を必要としているのです。

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これから広く求められるのは自己認識を高めて最適な決断をくだせる力。

そして、現にこのマインドフルネスという考えは近年においてビジネス界に広く浸透するようになりました。

実際のところグーグル社のように純粋な知性や専門知識よりも情動面での能力のほうが二倍も重要だと考える企業は徐々に増えてきており、自分自身や他者の情動を認識し、感情をコントロールしながら適切に行動する能力、いわゆる情動的知能が求められてくるようになってきたのです。(2)

「仏教をグーグルで広めたかったわけではないんだ。グーグル社の従業員に幸せへの鍵を手にしてもらう事が一番重要。彼らに感情的、精神的、肉体的、そして自己を超えてあらゆるレベルで人間として成長してほしい。」

グーグル社の元ソフトウェアエンジニアであったチャディー・メン・タン氏によって、社員が勤務時間中の20%を使って瞑想を軸にしたマインドフルネスを通して情動的知能を高める事を学ぶ「サーチ・インサイド・ユア・セルフ」と呼ばれるこのカリキュラムは2007年以来実施されるようになりました。

例えば、エンジニアリング部門の管理職のビル・ドゥエイン氏は、自分のために質の高い時間をもつ重要性に気づき、勤務日数を週四日に減らして前よりも少ない仕事量でより多くの業績をあげる方法を発見した事で昇進したと言い、このようにたった8週間の瞑想コースで人々は心の平穏と幸せを深め、時間をかけて物事を相手の身になってよく考える事で、あわてて結論を出したりしなくなると結果がでてきていると言います。(3)

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今後、情動的知能を高める事によって生みだされる付加価値が重要視されていく。

多くの企業がマインドフルネスや瞑想の重要性を説く一方で、当時まだ科学的根拠に欠ける実践をビジネスの一貫として取り入れていく必要性を疑う声も中にはあり、米国の大手保険会社の一つであるエトナ社の最高取締役マーク・バートリーニ氏もその一人でした。

しかし彼は2004年の家族でいったスキー旅行での頸髄損傷という大事故で左手に焼けるような酷い痛みの後遺症を負い処方された薬を1年ほど続けたものの効果がなく何事も諦めかけていた矢先に担当医からマインドフルネスの実践を勧められといいます。

瞑想って、全く何も考えない事じゃないんだよ。自分が今何を感じ考えているかを一旦全て受け入れてあげて、そしてその感情を手放す。感じた感情を自分からほどきとってあげるだけ。痛みについても同じことさ。」

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痛みや自分が感じている感情をいったん全て受け入れて、そして手放す。 

マインドフルネスが痛みを軽減してくれたわけではなく、ただ痛みからくる苦しみが軽減されたとバートリーニ氏は言い、自分が経験した感情の変化は他の社員にもなんらかの形で利益をもたらすのではないか、という考えのもとエトナ社の最高責任者に就いた2010年から本格的にマインドフルネスが取り組まれるようになりました。

2014年には約15000人の従業員がヨガや瞑想のクラスに参加するようになり、そのうち約28%がストレスが軽減され、約20%の睡眠の質があがったとアメリカ心理学学会のジャーナルで発表され、2012年には病欠などエトナ社から従業員に負担される傷病手当金は他の年に比べると7.3%も下がり、それは約11億5千万円ほどの節約に相当するといいます。

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社員一人一人の健康が会社の目に見えない大きな価値へと繋がる
さらに2015年、バートリーニ氏は米国エトナ社の最低賃金を12米ドルから16米ドルへと引き上げると発表し、約11%もの引き上げは才能のある惹きつける新しいビジネス戦略だと各メディアで注目を集めました。

「もし私たちが心身ともにより健康的な従業員をサポートする環境を提供できたら、より健全な世界、そしてより健全な会社を作り出す事ができるでしょう。」

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マインドフルネスは新しい価値を常に生み出す。

チャンディー・メン・タン氏によると体が運動をして筋肉をつけていくように、脳はマインドフルネスのトレーニングを積めば、マインドフルで心がリラックスをしている状態を持続することが可能になり、穏やかさ、明瞭さ、そして幸せといった心の3つの特質が自然に現れてくるようになるそうです。

また、フランス人僧侶マチウ氏はTEDトークにて、幸福は心の満ち足りた状態と表現し、「満ち足りた状態とはただ楽しいという感覚ではなく、心の奥底を静かに満たすもの」だと定義しました。

だとすると、外的要因によって左右される喜びとは異なり、人生におけるあらゆる心の動きや様々な感情がインプットされて根底にあるというマチウ氏が説明するこの満ち足りた状態は、自分だけの感情ではなくバートリーニ氏のように周りを大きく動かす原動力となり、会社の揺るぎない価値へと繋がっていくように思います。

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私たちは自分自身に意識を向けない限り、心の奥底を静かに満たす感覚に気づくことはできない。

また、インシアード(INSEAD)ビジネススクール・経営大学院で教授および心理療法士であるランデル・カーロック氏は、マインドフルネストレーニングを通して自己認識と社会的認識学ぶことは今後のビジネス界において不可欠だといいます。

これは20世紀終盤から21世紀の初盤にかけてビジネスにおける人との関係性や効率性が追求されてきた結果、幸せは数字や目に見える結果や成功の先にあると考えられてきましたが、マインドフルネスの概念が広く実践されるようになって、一人一人の自己管理能力から生まれる可能性を秘めたビジネスマネジメントが主流となる時代に移り変わってきたからではないでしょうか。

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ひとりひとりの自己認識と社会的認識が生みだす新しいビジネスの可能性。

マチウ僧侶は、思いやりについて瞑想していた時に脳の左前頭前皮質を測定して、今までに出たことのない幸せを表す数値が出たことで彼は世界一幸せな人間と呼ばれるようになったといいます。

私たちは、チベットの山奥に篭って毎日習慣的に瞑想に耽り、最低でも1万時間の瞑想修行をする僧侶のように外的要因からうける影響をすべてシャットアウトすることは求められていません。ただ幸せに対する先入観を持たずに自身の内面と向き合い「自分とは誰か」や「何を必要としているのか」を問う時間を1日のうち5-10分でも自分のために使えるようになる必要があるようです。

そして、そういった心と向き合えるきっかけや環境づくりができる会社の需要が今後幅広く増えていくのではないでしょうか。

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~人が生きる奇蹟の組織創造を目指して~ 
ビジョン経営を実現する 株式会社ワールドユーアカデミー
 

1. エド・キャットムル 、エイミー・ワラス「ピクサー流 創造するちから小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」 (ダイヤモンド社、2014年) p.240
2. チャディー・メン・タン, ダニエル・ゴールマン(序文) 柴田裕之(翻訳) 「サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法」(英治出版、2016年) Kindle 459
3. チャディー・メン・タン, ダニエル・ゴールマン(序文) 柴田裕之(翻訳) 「サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法」(英治出版、2016年) Kindle 345

別の記事を読む → http://blog.world-u.com/

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