見ている人達はしっかり見ている「スターバックスなど社会貢献を積極的に行なう企業の売上の伸び率は5倍、寄付するザッカーバーグは理想のリーダー像。」

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2016年3月、米スターバックス社は店舗で売れ残ったサンドウィッチや焼き菓子などの作り置きミールをフードバンクに提供するプロジェクト“FoodShare”の実施を発表しました。このプロジェクトは同社が運営する米国内7,600店舗が対象となり、1年目は500万食を提携するフードバンクを通じて食べ物を必要とする家庭に提供し、5年後の2021年には廃棄予定の商品の100%、約5,000万食を提供する計画です。

世界一の経済大国・米国であれ、日々の食事に事欠く経済的困窮にある人々は約5,000万人にのぼり、そのうち1,500万人は子供たちと言われています。スターバックス社はホームページに「私たちは、スターバックスが営業する地域にポジティブな影響をもたらすことができると、またそうするべきであると信じています。」とメッセージを掲げており、“FoodShare”の取り組みにより、米国の食料問題解決への一助、また廃棄量削減で限りある資源の有効活用を実行することが、同社が地域社会に対して果たすべき役割であるとの姿勢を示しているものです。

iStock_16926381_LARGE スターバックスが自社のビジネスとは関係ないところまで、ポジティブな影響を与え続ける。

1971年に創業し、今や世界72カ国に23,921店舗(2016/05/27時点)を展開する同社は、これまでもアフリカや中南米のコーヒーサプライヤーとの持続可能な関係を構築するためにサプライヤーの事業とコミュニティー全体を支援する基金を設けたり、店舗を米国グリーンビルディング協会が定めた環境と資源に配慮した建物の評価基準を満たした設計とするなど、CSRとして知られる企業の社会的責任に逸早く積極的に取り組んだグローバルカンパニーと言えます。

米国の調査会社、ニールセン・カンパニーが2014年に世界60カ国30,000人のインターネット消費者を対象に行った、企業の社会的責任に関する消費者意識調査によると、全体の55%が社会・環境活動に積極的に取り組む企業が提供する製品とサービスをもっと購入したいと答えているそうです。

iStock_75102647_LARGE世界中の半数以上の人たちが社会的責任を重視する企業の商品を購入したい。

また、52%の消費者は商品を購入する際にパッケージをチェックし、企業が社会貢献や環境に配慮した活動に取り組んでいるかを確認していると言い、消費行動において、サステナビリティ(持続可能性)が重要であると考えています。

この結果を検証するため、ニールセンは9カ国20ブランドに関して、消耗品と非消耗品の両方のカテゴリーで2014年3月の売上高の調査を行ったところ、サステナビリティに関連する取り組みをパッケージに記載したり、マーケティング活動を通じて、その取り組みを広告しているブランドと、それらを行っていないブランドでは、前年からの売上高の伸び率に2倍から5倍の差が見られました。

iStock_37706086_LARGE見ている人達はしっかり見ている。

このように、サステナビリティや社会的責任への企業の取り組みは売上に直接影響することが市場調査でも示されており、企業活動は収益を増やし続けることだけを目的とするのでは不十分で、事業を通じて社会にどのような貢献ができるか、どういった利益をもたらすことができるかを常に考え、実行し、活動を発信しなければ、企業としての価値は認められない時代がやってきています。

近年、株式投資において、投資家の価値観や倫理観を反映させる投資のあり方として、SRIと呼ばれる社会的責任投資や環境・社会・企業統治に着目したESG投資が注目されたことで、SRIの投資信託はここ10年で急速に増加し、ブラックロックやゴールドマンサックスなどの大規模な資産運用会社や投資銀行も社会的責任投資に参入しました。当初は社会貢献としての投資に焦点があてられましたが、昨今では競争力ある運用益が見込まれています

iStock_33449276_LARGE数十年前は、社会貢献などと本気で考えてきた企業はバカにされたが、今は立派な投資対象。

社会的責任投資に関して、特にミレニアル世代(1981−1997年生まれ)は他の世代と比較して、社会貢献度の高い事業への投資に関心を示しており、100万ドル以上の資産を持つ富裕層のミレニアル世代の49%が「社会的責任は投資先を決める際に特に着目する要素である」と答えています

米国のシンクタンク、ピュー・リサーチセンターは、2015年4月に発表された米国の国勢調査をもとに分析を行い、ミレニアル世代の人口はベビーブーマー(1946−1964年生まれ)の人口を追い抜き、最大の勢力となったと伝えました。さらに、2030年には世界の労働人口の75%をミレニアム世代が占めると予測され、今後ますますミレニアム世代は存在感を増し、彼らの消費及び投資志向が経済活動に少なからずと影響を与えることになるでしょう。

iStock_78173543_LARGE利益よりも社会貢献に関心を寄せる新しい世代。

2015年12月、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグと妻のプリシラ・チャンは、二人にとって初めての子、長女マックスの誕生に際し、慈善事業を目的とするチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブLLCを設立し、この有限会社に保有するFacebookの株式の99%、時価総額450億ドルを生涯をかけて寄付することを、Facebook上で誕生したばかりの娘に宛てた手紙として発表しました

父親となったザッカーバーグは「親愛なるマックスへ」で始まる手紙の中で、その喜びを娘に伝えるとともに、このように述べています。「君たちの世代がよりよい世界で暮らしていけるようになるために、僕たちの世代ができることはもっとあるはずなんだ。」 ザッカーバーグ夫妻をこの壮大で先の長い慈善事業へ導いたのは、まだほんの小さな娘、マックスの存在であり、娘の将来に幸福がもたらされることを願う親心であったのです。

iStock_83512971_LARGE社会貢献とは現在から未来にかけて、一番費用対効果が良い投資。

米国では2000年代に入ってから、エンロン事件やリーマンショックなど、大企業の経営幹部が絡んだ巨額の不正取引や企業への信用を失墜させる出来事が相次ぎ、経営者が備えるべき素質として、清廉さや道徳心が何より重要であるとの認識が高まっています。このような背景もあり、ザッカーバーグの宣誓は、その寄付金額が莫大であることから注目を集めましたが、事業で財を成した企業経営者がその資産の多くを寄付すると宣言した例は少なくありません。

企業を代表する経営者として、社会貢献に重点を置く姿勢を示すことは、これからより一層求められるようになるでしょう。

iStock_17230936_MEDIUM自分たちのことしか考えない企業に、多くの人の心は離れていくばかり。

ベストセラーとなった「日本で一番大切にしたい会社」(坂本光司著, あさ出版 2008)で取り上げられた長野県の寒天メーカー、伊那食品工業は1958年創業から48年間連続で増収を達成した優良企業です。同社のホームページには、企業の社会的責任やCSRといったキーワードは見当たりませんが、「いい会社を作りましょう」の経営理念の下、CSRについて独自の表現「凡事継続」を用い、地域・社会に貢献し、環境に配慮した企業活動に従業員が一丸となって取り組んでいます

同社は「あたりまえのことをきちんと」をモットーに、組織の一員として日々の暮らしの中で社会のためになるよう心掛けることを宣言しています。それはスーパーマーケットなどの駐車場では、なるべく入り口から離れたところに駐車するようにし、体が不自由な方や妊婦さん、年配の方が大変な思いをしないようにという配慮であったり、従業員は通勤時に会社の敷地に入るときには右折禁止とし、必ず左折で入場することで会社近くの幹線道路で渋滞を引き起こさないよう工夫することや会社の駐車場では自然環境に配慮し、周囲の草花や樹木に排気ガスがかからないよう、前向き駐車を呼びかけるなど、少しの心掛けで誰もができる社会貢献を続けているのです。

iStock_67025147_LARGE結局、社会的責任やCSRではない。自分たちが気持ちいいからやる。

2011年、ハーバード大学の教授であるマイケル・E・ポーターは、CSRとは異なるコンセプトを持つ企業活動として、CSV(Creating Shared Value=共有価値の創出)を提唱しました。CSVは企業が社会問題の解決をビジネス機会と捉え、本業を通じて社会的価値を創造し、結果として経済的価値が創造される考え方です。(2)

家庭用品及び食品のグローバル企業であるユニリーバは、発展途上国の貧困層の人々に低価格の石鹸ブランド ライフボーイを普及することにより、5歳以下の幼児の感染症による死亡率低下を実現するというCSVのコンセプトに則った事業戦略を進めています。

iStock_72494605_LARGE ユニリーバ:手洗いの習慣を普及することで多くの子供の命を救うことができる。

同社はインドの農村部への石鹸の普及を目指し、手洗いの習慣がない子供達に紙芝居などを使って手洗いの大切さを教え、石鹸の販売も農村の女性たちにビジネスの基礎を研修し、個人事業主として訪問販売やキオスクで販売した売上の一部を還元しました。ユニリーバはビジネスとして貧困層の石鹸市場という新しい市場を創造する経済的価値を実現することに成功し、ビジネスとサステナビリティを融合した事業の可能性を広げています。

iStock_82458143_LARGEDoing Well by Doing Good: 正しいことをしてビジネスを良くする。

幕末から大正時代を生き、生涯に500以上の企業の設立・経営に関わり、『日本資本主義の父』と称される実業家、渋沢栄一は、「できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与えるように行動するのが、我々の義務である。」という言葉を遺しています。

経営者として、ビジネスの拡大と安定に注力し、従業員に目をかけ、さらに社会貢献となる活動までと考えると、時間も資金もそんな余裕はないと尻込みしてしまうのは当然です。しかしながら、社会貢献を寄付やボランティア活動と捉えるのではなく、本業を通じて社会問題解決に関わることが出来るのであれば、それこそが持続可能な社会貢献となるのではないでしょうか。

iStock_000016853382_Large世の中のリーダー像も時代によって大きく変わる。

インド建国の父、マハトマ・ガンジーはかつて、「未来は、今、我々が何を為すかにかかっている」と述べました。今、私達が行うことが未来を築いているならば、経営者としてあなたの決断により踏み出した最初の一歩は、会社の未来、そして地域・社会の未来につながるのです。リスポンシブルカンパニーへの一歩は他の誰でもなく、あなたから始まります。

blog_vision

~人が生きる奇蹟の組織創造を目指して~ 株式会社ワールドユーアカデミー 

(1)渡邊奈々 「チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える」(日経BP社、2011年)Kindle 741(2)グロービス経営大学院(著)、田久保 善彦(監修)「創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか」(東洋経済新報社、2014年)Kindle 1851  参考書籍)●塚越寛 「リストラなしの年輪経営〜いい会社は『遠きをはかり』ゆっくり経営〜」(光文社知恵の森文庫、2016年)●フリードヘルム・シュヴァルツ、石原薫訳 「知られざる競争優位 ネスレはなぜCSVに挑戦するのか」(ダイヤモンド社、2016年)●イヴォン・シュイナード、ヴィンセント・スタンリー、井口耕二訳「リスポンシブル・カンパニー〜パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは」(ダイヤモンド社、2014年)

別の記事を読む → http://blog.world-u.com/

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