すべてオレにまかせろ型の企業は30年で潰れる「トヨタとNASAに共通する100年企業の”永遠に時を刻む仕組み”」

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あるデータによれば、1980年代の日本の会社の平均寿命は約30年ほどでしたが、グローバルやテクノロジーの変化を受けて、2010年の平均寿命は7年、現在では5年を切っているのではないかという分析もあり、一発屋や短期的に会社を成長させることができたとしても、様々な時代の変化をくぐり抜けて、長期的に繁栄し続けることのできる企業がどんどん少なくなってきています。

世界的に知られている「ビジョナリー・カンパニー」の著者であり、ピーター・ドラッカーの教え子としても知られる、ジェームズ・C・コリンズは時代を超えて100年以上繁栄し続ける企業を徹底的にリサーチし、戦争、不況、そして、技術革新など、世界の劇的な変化を乗り切った企業と、そうでない企業の違いを分析したところ、すべての企業に一通した珍しい特徴はありませんでしたが、唯一すべての企業に共通していたことは、アイデアや計画は諦めることはあっても、「会社」だけは絶対に、絶対に諦めないという強い意志を持っていることでした。(1)

iStock_000082809441_Large 100年企業に共通する唯一の特徴は「絶対に”会社”を諦めないこと」

そして、「絶対に諦めない強い意志」と平行して、自分の組織の基本的価値観をしっかりと持ち、この価値観とは外部の環境が変わっても、たとえ、これらの価値観が利益に結びつかなくなったとしても、百年間にわたって守り続けていくものと、状況に応じて変更できたり、切り捨てられるものをしっかりと見極めるようにしなければならないと、「ビジョナリー・カンパニー」の中でコリンズ氏は指摘しています。

100年以上繁栄し続ける企業に「すべてオレにまかせろ」というタイプのリーダーは全くもって存在しませんが、JALを短期間で再生させた京セラの稲盛和夫氏が行なったように、まずはビジョンやフィロソフィ(哲学)を従業員に伝えていくことで、彼らの細胞を活性化させ、そして、その活動を会社全体の経営に直結させながら、組織の頭と体を一体化させていかなければなりません。(2) (3)

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まずは従業員の細胞を活性化させ、それを経営に結びつけていく。

口に入れる食べ物で体ができるように、耳に入れる言葉で心ができるとも言われますが、6000人集まってもできないことを60人でやってのけてしまうグーグルや驚くほどのスピードで再生を果たしたJALの再生には、間違いなく価値観の共有がまず最初にあり、18年連続で赤字が続いていたハウステンボスをわずか3年で再生させた、H.I.Sの澤田秀雄さんも何か特別な経営手法を持ち込んだわけではなく、ただ率直に「ディズニーランドを越えよう!」と従業員の心に語り続けました。
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iStock_000076576235_Large 耳に入れる言葉で心ができる「ディズニーランドを越えよう!」

しかし、会社の業績が悪くなり始めると、多くの企業が「パフォーマンスの最適化」、「スキルの標準化」など様々な手法を使って、社員を動かそうとし、最近の職場は自分がやらなきゃ、逆にやられると、会社はお互いのミスを採点し合う場所になってしまっていますが、アメリカ人労働者を対象に、ギャラップが行なった調査によれば、「愛社精神なし」、または「できれば会社に深入りしたくない」と答えた人は71%にも上り、ハーバード・ビジネス・レビューの調査でも、優秀な若い社員は平均28ヶ月で職場を去っていることが分かりました。(5) (6)

iStock_000001452089_Medium 「できれば深入りしたくない」と答える従業員が71%。

多くの企業は、効率良く組織を動かそうとするため、様々なルールや規律を導入していきますが、仮にその規律がトヨタやグーグルなど優良企業で採用されているものでも、その規律を守る意味を伝え、自ら社内の規律を守る人を育てなければ、最終的には社員を苦しめるだけの悲惨な結果に終わってしまいます。(7)

例えば、どんなビジネスマンであれ、経営者であれ、スティーブ・ジョブズのやり方に憧れますが、ただ彼のやり方をマネただけでは、「ジョブズっぽいがジョブズではない人」が増えていくだけで、同じようにトヨタやグーグルのやり方だけをマネても、なぜ彼らのやり方からヒントを得ることが自分たちの成功につながるのかということを説明して、「気持ち」の部分に落とし込んでいかなければ、むしろ成功からはどんどん遠ざかっていってしまいます。(8)

iStock_000017962379_Large トヨタの「心構え」を理解せず、「やり方」だけマネてもほとんど意味がない。

世の中には、「トヨタの片付け方法」や「トヨタの企画書の作り方」など様々な手法が本やセミナーなどで紹介されていますが、それ以前に、トヨタの最高のサービスを提供するという使命感は、従業員一人ひとりの心の中に深く入り込み、会社のことを自分のこととして考える人たちが集まって、はじめて「トヨタの片付け方法」や「トヨタの企画書の作り方」の実践が意味を持つようになります。

トヨタの使命感がよく分かる話として、次のようなエピソードがあります。(9)

「シカゴで大雨が降った日のこと、ある男性が運転するトヨタ車のワイパーが壊れ、運転を続けられなくなってしまった。仕方なく車を路肩に停め、雨の上がるのを待つことにした。そのとき、後ろから老人が歩いてきて、いきなりワイパーを修理しはじめるではないか。突然のことにわけがわからない男性は、老人が何者なのか、なぜワイパーを修理してくれるのか尋ねた。老人はトヨタを退社した元作業員で、自分が勤めていた会社のクルマにトラブルが起きているのを見て、修理する義務があると感じたのだという。ワイパーはすぐに直り、男性はお金を払おうとしたが、老人は首を振って、決して受け取ろうとはしなかった。」

iStock_000016277614_Large (1)人を動かすのは規律ではなく、ビジョンと心。

またビジョンや使命が社内に行き渡っている例として次のようなエピソードもあります。(10)

1962年、 当時のJ・F・ケネディ大統領がNASAスペースセンターを訪れた際、大統領の訪問に備えて施設内の掃き掃除に精を出すある清掃係の姿を目にしたため、大統領は男に向かって声をかけました。

「こんにちは、ジャック・ケネディといいます。ここで何をなさってるんですか?」  

すると男は、ためらいなくこう答えたと言います。

「人類を月に送り込むお手伝いですよ、大統領閣下。」

iStock_000016852636_Large 社員を手法や規律に当てはめることは簡単だが、情熱を教えることは容易なことではない。

時代を超えて繁栄し続けるビジョナリー・カンパニーは、層の厚い経営陣が、まず社員の心にビジョンや哲学を浸透させようとするのに対して、比較的普通の企業は「一人の天才を一千人で支える」という経営方針を取っていることが多いとコリンズは指摘していますが、様々な困難を乗り越えられる企業に必要なのは、数少ない天才ではなく、良き兵士を持つことであり、偉大な考えを実行できる優秀な部隊を作れるかどうかが長期的な企業の行く末を左右すると言っても過言ではありません。(11)

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必要なのは、数少ない天才ではなく、考えを実行できる優秀な部隊。

一人で仕事をしている時、社内でミーティングをしている時、ご飯を食べている時、電車に乗っている時、そして寝ている時でさえも常に心は存在しており、そして心は周りに影響を及ぼしながら、企業のパフォーマンスに常に大きな影響を与えています。

マイクロソフトがグーグルを潰すために投資したお金は1兆円以上とも言われ、2009年にマイクロソフトが検索エンジンのBingを立ち上げた時、グーグルは大きな不安に駆られましたが、心が健全な状態であったグーグルは一致団結し、全員が総力を上げて検索エンジンの強化に取り組むことで、マイクロソフトから猛攻に打ち勝つことができました。(12)

iStock_000056323244_Large マイクロソフトからの猛攻撃に打ち勝ったグーグル。

剣豪はその時に、その時に、心を整え、最高のパフォーマンスを出さなければ、切られて死んでしまいますが、ビジネス社会では業界最下位の会社でもとりあえず生存はできますし、営業の成績が全然よくない人でも、とりあえず給料はもらえるため、心の問題を取り残したままでも、なんとかやっていくことはできるかもしれません。

しかし、現在はどんどん一人勝ちの時代に突入し、常に心を整えて、最高のパフォーマンスを出せるようにしておかなければ、倒産や買収などがいつ起きてもおかしくないような世の中になってきており、実際、2014年には9731件の会社が倒産してしまっています。

iStock_000036109484_Large ビジネスは「心の時代」に入った。

アメリカという偉大な国を築いた指導者が、建国時に一番時間を費やしたことは、「誰が大統領になるべきか。」ということではなく、彼らがこの世を去った後も、優れた大統領をずっと生み出し続けるために、どんなプロセスを作るか、国の原則とは何なのかなどの指針や仕組み作りで、アメリカの憲法が作られて約240年間という時が経ちましたが、憲法が修正されたのはたった17回しかなく、恐らくアメリカという偉大な国が存在し続ける限り、この憲法が大きく変わることはないでしょう。(13)

コリンズはビジョナリー・カンパニーの中で、リーダーの仕事は、その人が「時を告げる」のではなく、自分がこの世を去った後も、永遠に時を刻むことのできる「時計」を作ることだと述べていますが、会社をリードする人達が行わなければならないのは、素晴らしいアイディアで売上を10倍にすることでもなければ、優秀な人を外部からヘッドハンティングしてくることでもなく、アントニ・ガウディが建設中であったサグラダファミリアのように、ビジョンを永遠に引き継いでくれる組織を生み出す仕組みを作ることです。

そういった意味で、企業も永遠に続けるひとつの建築物みたいなものなのかもしれませんが、やはり企業も基盤である心の部分がしっかりしていないと、日本の注文住宅のように、数十年という寿命で終わってしまうのかもしれません。

ビジョン
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~人が生きる奇蹟の組織創造を目指して~ 株式会社ワールドユーアカデミー 

1.ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」(日経BP社、1995年) Kindle P747  2.ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」Kindle P1084  3.原 英次郎「稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる――自分、人、会社全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィ」(ダイヤモンド社、2013年) Kindle P149  4.澤田 秀雄「運をつかむ技術―18年間赤字のハウステンボスを1年で黒字化した秘密」(小学館、2012年) P20  5.カレン・フェラン「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」(大和書房、2014年)  6.エカテリーナ・ウォルター「THINK LIKE ZUCK マーク・ザッカーバーグの思考法」(講談社、2014年) Kindle P361  7.ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー2― ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」Kindle P2698  8.成毛 眞「成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈」(ベストセラーズ、2012年) P4  9.張燕「ジャック・マー アリババの経営哲学」(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2014年) P146-147  10.エカテリーナ・ウォルター「THINK LIKE ZUCK マーク・ザッカーバーグの思考法」Kindle P1562  11.ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー2― ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」Kindle P1041  12.エリック・シュミット「How Google Works 私たちの働き方とマネジメント」(日本経済新聞出版社、2014年) P132  13.ピーター・ティール「ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか」(NHK出版、2014年)

別の記事を読む → http://blog.world-u.com/

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