- 2016-7-16
- コラム
テレビゲームをやっているだけで生活している人が5,500万人「10年後、グーグルを作りたければ、ドローンで遊べ。」
2007年にアップルがスマートフォンを発表したとき、多くの専門家が失敗すると予測をしましたが、専門家がこうした大外れの予測をしてしまうのは、私たちが新しいテクノロジーに直面すると、本能的に恐怖を覚えるためであり、車が当初発明されたときにも同じような否定的な予測がされました。(1)
基本的に人間の脳は既に知っていることや、理解している情報を好むようにできています。更に、長期間に渡ってある一定の世界観や価値観が経験によって形成されていくことにより、大人は子どもの頃よりも変化に対処できないようになっていくため、自分がすでに知っていることのみに執着するようになりがちです。
失敗するのが怖くなり、すでに成功例があるビジネスモデルに手を出してしまう
しかし、そうした本能に惑わされて、これまでのビジネスモデルにしがみつくのは衰退への一本道であり、実際にアメリカのウエスト・バージニアという地域が現在経済的に衰えてしまったのは、19世紀から20世紀に発達した石炭鉱業に固執し、当時成長分野であった機械と情報の分野に労働力を向かわせなかったからだといいます。(2)
無理にでも新しいことに挑戦していかなければ、企業や街は必ず衰退する
近年ではITの発達がすさまじく、それに対応して新しいビジネスの形が生まれてきており、例えば最近ではビデオゲームやコンピュータゲームを使った競技を行う「エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)」で、プロの選手として生計を立てている人たちが、現在およそ5,500万人が存在し、およそ4割強がゲーマーとしての収入のみで生計を立てているそうです。
彼らの収入源はゲーム会社のスポンサーからの契約金や大会での賞金で、日本人で初めてプロゲーマーという職種を築いた梅原大吾さんが中学生の時にゲームを始めた時には、ゲームで食べていけるなんて思いもしなかったと言いますが、仕事の打ち合わせをすっぽかし、ずっとゲームに熱中していた経験のある元マイクロソフト日本法人の社長、成毛眞は新しい時代の才能について、次のように指摘します。(3)
「映画が好きならとにかく映画を観ればいいし、音楽好きならずっと聴いていても演奏していてもいい。 ゲームでもマンガでもファッションでも、好きなことやのめり込めることをやり続ければいい。ずっと家にこもってゲームをしている引きこもりも、考えてみればものすごい集中力である。その集中力を活かせる分野が見つかったら、さぞかし周りを圧倒するような能力を発揮すると思う。」
ただ、好きなことを死ぬ気でやり続ければいい、気づけばそれがビジネスになっている
最近は働き方から、経営まで様々なところで取り上げられ、年間3兆円というお金を生み出すグーグルですが、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンがグーグルを創業した時には収益を得る構造はあまり無く、「上手くいかなかったら、また大学に戻ればいい」と気軽な気持ちで始めたものでした。
シリコンバレーを中心としたイノベーションは徐々に成熟し始めていますが、現在、20年前のグーグルの創業者のような先見性のある人たちは、一般の人達が「これをどうやったら収益化できるの?」と首を傾げてしまうドローンのビジネスに朝から晩まで取り組んでおり、現代のドローンを取り巻く環境は、グーグル、アマゾン、そしてウィンドウズ95さえ出ていなかった1993年のインターネットの状況に匹敵すると言います。
今、ドローンを飛ばす人たちは1993年のインターネット革命前夜のように次の世界を思い描いている
人工知能を使えばドローンは無人で自律して飛行をすることができるため、いずれはドローンがメールのように個人間を飛び回って物を送りあったり、どこかのお店に調べたいものをドローンが現地に飛んでいって「検索」するようになったりすることで、ドローンは現実世界のグーグルになっていく可能性があります。
ドローンを30台以上持ち、ドローンに詳しいクリエイターの高城剛さんは、そうした未来を見通す重要性を次のように述べています。(4)
「20年前に、世界中の家庭が高速インターネットにつながり、映像や音楽を家にいながらリアルタイムでレンタルしたり購入することが可能になる未来を描けた人たちは、今も活躍している。」
「これから20年後のドローンを中心としたロボティクスの未来を、現在イメージできる人は職を失うことはない。」
ドローンは21世紀のグーグルになる
未来を読むために必要なのは物事の原理、つまり「あるものが誕生した理由」「何を解決するのか(できたのか)?」「どんな必要性があって生まれたか」を理解する必要があり、これは今も昔も大きな実績を残してきた個人や起業が本質的に理解していることでもあります。(5)
例えば、ドローンの原理を紐解いていくと、ドローンは空を飛ぶための4つの回転翼と加速度センサー、GPS、情報処理のためのCPU、そしてデータ保存のためのフラッシュメモリで構成されており、勘の良い人であれば翼を除くそれらの構成物に着目した時、スマートフォンを連想するのではないでしょうか。
つまり、ドローンとは空飛ぶスマートフォンであり、作りは前述の通りスマートフォンとほとんど変わりませんが、空を飛ぶことができるためスマートフォンが克服できなかった重力に挑戦することができ、インターネットと重力の両方を兼ね備えているため、私たちに新たなテクノロジーをもたらしてくれるのです。
今ある現実から、どう未来を予測できるか
アマゾンや楽天などがドローンでの配送を始めるそうですが、そうなることで今までスマートフォンで音楽をダウンロードする時に「残り時間2分」と表示されるのと同じように、荷物の位置情報を「12時39分現在、千葉市から北西2キロメートル地点を時速40キロメートルで飛行中」といった具合にドローンが教えてくれるため便利になりますが、前述の高城剛氏は「iPhoneの凄さがGPS機能ではないのと同じで、ドローンの本当の凄さは現在位置を知らせてくれるGPSではなく『検索』にある」と述べました。(6)
スマートフォンの登場により、デジタル化された書籍や音楽、映画、メディア媒体などをどこにいてもインターネット上で検索することができるようになりましたが、スマートフォンで検索できるのは、あくまでもKindle書籍のように「デジタル化」された物だけで、現実社会の人物を検索してその人がどんな服を着ているかは、今まで検索することはできませんでした。
ところが、インターネットのように自由に空を行き来することのできるドローンであれば、たくさんのドローンを空に放つことで、世界全体の「デジタル化」をすることが可能になり、「新宿3丁目の黒い帽子を被った人」と検索すればドローンに内蔵されているカメラからその人の映像を受け取ることが可能になるため、インターネット上でしていたことを現実世界でも行うことができるようになるようです。(7)
10年後のグーグルを作るのであれば、どれだけ先を予測して行動できるか
つい数年前まで、大量のロボットが空を飛ぶなんてそんなSF映画のような話はありえないと人々が口にしていましたが、グーグル元日本法人代表取締役の村上憲郎氏は、人間が想像できる物はだいたい現実化するとして次のように述べました。(8)
「SF映画というのは世界のこれからの行き先を暗示していることが多いんですよ。単なる娯楽映画だとは言い切れないことが本当に多いのです。」
たった10年で世の中はスマホだらけ、次の10年で世の中はドローンだらけ
実際に、潜水艦や衛星、タッチスクリーン、そしてブルートゥースなどは過去にSF映画で扱われ、人々が「そんなSF世界のようなモノ」と比喩した物のほとんどが現実化し、今では何の違和感もなく社会に溶け込み、私たちの生活の一部となっています。
それと同じで、ドローンによって毎日監視されているようで気持ち悪いと思う人もいるかもしれませんが、30年前の人たちに「30年後には私たち全員のポケットの中にスマートフォンと呼ばれるGPSが備えられた機器が入っており、世界中の人が、今あなたがどこにいるのかを知ることができるようになります」と伝えたら、ひどくショックを受けることでしょう。しかし現在、私たちの身の回りにそんな人たちがいないのは言うまでもありません。
人間が想像できるような物はだいたい現実化する
それにも関わらず、多くの人々が未来を描くことができず、いつも未来予測に失敗してしまうのは、目の前で起きている事柄をただの「点」としか見ることができておらず、点を繋げ「線」として見ることができなかったからです。(9)
1830年代のイギリスでは蒸気機関の改良が進んでおり、自動車の開発が進められていましたが、当時、馬車が一般的な交通手段であったイギリスでは、鉄の塊である自動車は非常に危険な乗り物だと考えられ、「赤旗法」という法律が施行されました。
「赤旗法」とは自動車の制限速度を郊外では時速6.4km、市街地では時速3.2kmに制限する法律のことを指し、さらに自動車の50m先には赤旗を持った先導員を歩かせることで「危険な」鉄の塊である自動車が迫ってくることを人々に知らせる役目があったと言われていますが、言うまでもなく人が歩くのとそう変わらない乗り物が発達することはありません。
イギリスでは車を単なる危険な鉄の塊という「点」として扱い、その延長線上にある人員・物資輸送や都市間の高速移動などの「線」に気づかなかったため、イギリスの自動車産業はフランスやドイツと比較して大きく遅れをとることになり、自動車産業の世界的な中心地にはなれませんでした。(10)
未来を拒むことは時にその国の産業を殺すことになる
銀座の大手百貨店に関しても、中国人の爆買いバブルという「点」ばかりに目が行き、中国の好景気や円安などの爆買いの原理が盲目になってしまったために、その延長線上に見えていたはずの中国の景気後退や、円高などによって引き起こされる爆買いバブルの終了や、中国人優先のサービスにうんざりして、古い常連客が離れてしまう可能性を見過ごし、現在、銀座の百貨店では閑古鳥が鳴いていると百貨店関係者は次のように語り、自らが犯したミスを認めたそうです。
「今年の春節以降、おカネを使う裕福な中国人は潮が引くようにスーッといなくなりました。そして気づいたんです。日本人のお客様もいないことに……」
目先のことだけを考えて、長期的な視野を持てない代償は大きい
一方で、インターネットの可能性に気づき、誰よりも早くオンライン上で物の販売を始め、送料の無料化、プライム会員には映画や音楽の無制限アクセスを開始し、最近ではドローンでの配送を始めるなど、常に物の原理を分析し、世界を大きな「線」として捉えているアマゾンは現在、時価総額33兆円の、世界でもっとも価値のある企業の一つであり、その企業価値は現在も上がり続けています。
ITの聖地シリコンバレーでは他の都市の倍の速さで時間が流れているとよく表現されますが、ITの発達により、世界は今までよりも何倍も早いスピードで変化し、1年や2年先の予測をするだけでは、世界の変化のスピードに対応する事はできず、物事の原理を見直し、過去から現在にかけての変化のパターンを理解して、初めて未来を描く事ができるのかもしれません。
~人が生きる奇蹟の組織創造を目指して~ 株式会社ワールドユーアカデミー
高城剛「空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は、世界を制す」(集英社、2016年)P44 アレック・ロス「未来化する社会 世界72億人のパラダイムシフトが始まった」(ハーパーコリンズジャパン、2016年)P68 成毛眞「勉強上手 好きなことだけが武器になる」(幻冬舎、2012年) 高城剛「空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は、世界を制す」(集英社、2016年)P58 佐藤航陽「未来に先回りする思考法」(ディスカバー・テュエンティワン、2015年)P2198 高城剛「空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は、世界を制す」(集英社、2016年)P92 高城剛「空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は、世界を制す」(集英社、2016年)P93 村上憲郎「スーパーIT高校生”Tehu”と考える 創造力のつくり方」(角川書店、2013年)P38 佐藤航陽「未来に先回りする思考法」(ディスカバー・テュエンティワン、2015年)P646 高城剛「空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は、世界を制す」(集英社、2016年) P48
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