笑いが減ることで低下する創造性「赤ちゃんは一日400回笑うが、普通の大人はたった一日15回しか笑わない。」
赤ちゃんは1日平均400回以上笑うと言われますが、大人になり35歳を超えるとその数は1日15回にまで減っていってしまいます。
私たちが毎日何気なく行なっている「笑う」という行為は、人間特有の能力で、社会学者で関西大学名誉教授でもある井上宏さんは、人間が笑う理由について、「心身の健康」と「人間関係の中の協調性」を挙げています。
しかし、ここ20年で企業経営の手法は急激に増え、効率化、スキルの標準化、そしてパフォーマンスの最適化などが日本の職場に導入されたことで、人間に潜在的に備わっている「笑う」という行為が職場からどんどん排除され始めています。
大人になる過程で笑う回数は、20分の1以下に激減する
1日400回とまではいかないかもしれませんが、社会人になる前の学生時代、ほとんどの人は今よりももっと感情を爆発させ、大きな声で笑っていたはずです。
しかしながら、職場は仲良しクラブじゃないし、仕事はつらいのが当たり前という企業の管理体制が、職場から笑いを奪い、従業員は使い捨ての機械のように扱われ、一人ひとりの個性や才能が全く発揮されないまま、心だけが日々消耗され続けてしまっているのが、日本企業だけではなく世界の大半の企業の現状でもあります。
最近ではロンドン・ビジネススクールやMITなど世界のトップスクールで、職場の笑いについての研究が行われており、笑いによって自分の心のドアを開き、それが相手の心のドアを開かせることで、生産性や創造性を劇的に上げ、社員の離職率を下げるなど様々な効果が報告され始めています。
奪われて初めてわかる、笑いが無い生活
作家やセミナー講師として活躍するマイケル・ケル氏(Michael Kerr)は、社内に笑いやユーモアのセンスが増えることでストレスや衝突が減り、従業員たちがお互いを信頼し合うことで、新しいアイデアに賛同しやすくなるため、創造性やイノベーションの割り合いが高まると言います。
また、ノースウェスタン大学のカルナ・サブラマニアム氏(Karuna Subramaniam)のリサーチによれば、お笑いの動画とホラーの動画を見せて、その後にパズルと問題解決のテストを解いてもらったところ、お笑いの動画を見た後の方が「ひらめき」の度合いが多く、スコアが高かったと言います。
吉本興行の元お笑い芸人で、現在は経営者として活躍する殿村政明さんは、笑いには相手と自分を一気に近づける媚薬(びやく)のような力があり、本来は1年かかって築く信頼関係をたった1ヶ月で築くことができるスピードコミュニケーションの一つとして、ビジネスマンは笑いについて真剣に考えるべきだと述べています。(1)
クリエイティブな仕事とは笑いながらやるものだ
中国の思想家である孔子は、「生きることの達人は、仕事と遊び、労働と余暇を区別しない」という言葉を残しましたが、ヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソンも次のように述べています。
「ビジネスリーダーの人たちは、物事を真剣に考えすぎる傾向にあります。彼らは従業員の人たちが人生の多くの時間を仕事に費やすということを忘れていますが、まずはとにかく楽しむべきなのです。むしろ、こんな当たり前のことをわざわざ口にする必要はないと思うのですが、この当たり前の概念を、まだまだ多くの企業が理解していないように思います。」
「面接相手が極度の緊張に見舞われていると思ったら、私はよく、“ジョークを言ってみてください”と持ちかける。たとえつまらないジョークでも、そうすることで人は自分を笑い飛ばし、殻を打ち破ることができる。」(2)
生きることの達人は、仕事と遊びを区別しない
また、「最も働きがいのある会社(Great Place to Work)」にランキングしている企業に勤める従業員の81%が「自分たちはとても楽しい職場で働いている」と答えており、ハーバード・ビジネスレビューに掲載されたコンサルタントのファビオ・サラ氏の調査でも、目覚ましく活躍する経営幹部は一時間に平均17.8回笑うのに対し、普通の経営幹部は平均7.5回という結果が出ています。
結果を出す経営幹部は、普通の経営幹部に比べて笑う回数が2倍以上
カナダのある金融機関の調査では上司のユーモアのセンスが高ければ高いほど、部下のパフォーマンスが良いことがわかっており、ビンガムトン大学の生物学者であるデイヴィッド・スローン・ウィルソンは、この理由について次のように述べています。
「笑いが適切な時に起これば、みんなを楽しい気持ちにさせます。すると脳が自動的に私たちが心地よいと感じるアヘンやモルヒネのような化学反応混液を出すため、私たちは笑うことで心地よく感じるのです。私たちが心地よく感じれば、仕事の効率も上がって当然です。」
生物学的にも笑いが仕事の効率を上げるという認識は正しい
ビジネスの場以外でも、人間が集まり組織として機能していく以上、笑いやユーモアのセンスが様々なバリアを取り除いてくれます。
例えば、1995年に年俸1億4,000万円から980万円に下がりながらもメジャーリーグに渡った野茂英雄選手は、初めて大リーグのマイナー・キャンプに参加した時、ドミニカの選手たちが本当に楽しそうな顔をしながら野球をしていることにカルチャー・ショックを受けたと述べています。(3)
「日本だと、しゃべりながら練習をやっていたりすると、すぐに監督やコーチから“不真面目だぞ!”と言われ注意を受けてしまう。(中略) ところが、彼らは何をやるにしても楽しそうに目を輝かせている。練習前のストレッチでも、練習後の英語教室でも、いつもニコニコした笑みを絶やさない。」
「彼らと接していて、“そうだ、野球は楽しみながらやらないといけないんだ”ということを改めて思い出しました。忘れかけていたものを蘇らせてくれたとでも言うでしょうか。見ているこっちまで、楽しく幸せな気分にさせてくれました。こんな気持ちになったのは、社会人の時以来です。」
メジャーリーグに来て、また野球が楽しいと思えた
また、浮き沈みの激しい航空業界で40年連続で黒字を出しているサウスウエスト航空は、機内アナウンスをラップで行なったり、ジョークを言ったりしてフライト中も乗客を楽しませ、アメリカでも飛び抜けた経営を行なっていることで有名です。
この会社のモットーは「顧客第二主義・従業員の満足第一主義」で、従業員を満足させることで、従業員自らが顧客に最高のサービスを提供し、そこから売り上げが上がることで株主を満足させることができるという、普通の企業とは全く逆の考え方をすることで、利益を上げ続けています。
顧客第二主義・従業員の満足第一主義
そして、ユーモアと言えば、毎年エイプリル・フールには、思わず信じてしまいそうなリアルさとジョークを織り交ぜたウィットに富んだウソを発表するグーグルが挙げられますが、創業者のラリーペイジとセルゲイ・ブリンは就職経験が全くないままグーグルを起業したため、通常の会社ではなく、スタンフォード大学のような自由な雰囲気を保つためにはどうしたら良いかという観点から、グーグルの経営を考えていったと言われています。
もちろん、スタンフォード大学の自由でユーモアがある雰囲気をそのまま職場に持ち込み、維持し続けることは想像以上に難しく、多くの場合は資本主義の圧力に負けて、従業員は少しずつ管理され、人間味や創造性がどんどん失われていくというジレンマに陥ってしまいます。(4)
グーグルは自由でユーモアがあるスタンフォードの雰囲気を職場にそのまま持ち込んだ
孔子が言うように、人生の達人にとって、今行なっていることが仕事なのか、遊びなのかは周りが決めてくれることなのでしょう。
当人にとってはすべてが仕事であり、同時にそれが遊びにもなるならば、経営という括りで職場から笑いやユーモアを奪ってしまうのは、生産性や創造性が低下するということ以上に、何か人間の本質的なものを無理やり奪ってしまうように思えてなりません。
もし「顧客第一主義」を掲げ、売上や利益を伸ばすことに重点を置くことが20世紀の経営であるならば、サウスウエスト航空のように「顧客第二主義・従業員の満足第一主義」をモットーに、まずは顧客ではなく、周りの従業員から幸せにしていくのが、新しい21世紀の経営なのではないでしょうか。
のちに、笑いとユーモア溢れる従業員が必ず会社を良い方向へ持っていってくれるはずです。
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