アマゾン本社は従業員が2万人に対し、犬が2,000匹「従業員同士の信頼関係はペットが維持し続ける。」

Pocket

ペットブームとよく耳にしますが、アイペット損害保険株式会社は、日本全国で約2,061万匹の犬と猫がペットとして飼育されていると発表し、ブームという名の通り、その数は日本の15歳以下の子供の数、約1,617万人をはるかに上回り、少子高齢化や核家庭といった社会の構造変化に伴い、ペットの社会的地位は向上しているといいます。

アメリカの217名を対象とした調査では、ペットを飼っている人のほうが飼っていない人に比べて、自尊心が高く、体調が良く、孤独を感じておらず、社交的だったという結果をうけ、ミネソタ大学のボイントンヘルスの医療部長ギャリー・クリステンソン氏は、「ペットはいつでも側で無条件の愛を私たちに与えてくれ、人間とペットとの絆というものは私たちの精神的健康に大いに影響を与える」と分析しています。

istock_75250363_mediumペットは経済発展で壊れてしまった人間関係を修復する役目を果たす

近年、犬や猫が人間の精神面や健康面に果たす役割についての研究が世界でも進められており、ペットといると「落ち着く」感じは、単なる動物好きの思い込みではなく、実際、「脈拍数、血圧が安定する」や「ペットを飼っている方が健康面の不安を訴える人が少ない」などと、数多くの研究によって証明されている事も事実です。

ペットと触れ合う事で落ち着きや、気分向上につながる要因のひとつとして今注目を集めているのが、通称ハッピーホルモンとも呼ばれるオキシトシンというホルモンで、通常、愛したり優しくしたり、誰かの事を思いやると私たちの脳の視床下部で作られ、下垂体から放出されます。

istock_59515440_mediumペットを飼っている人の方が、健康面で明らかに安定している

一方で、ストレスを感じると私たちの副腎皮質でコルチゾールというステロイドホルモンの一種が放出され、慢性的に高くなったり低くなったりすると健康に悪影響を及ぼす事が知られていますが、最近の研究ではオキシトシンの投与でコルチゾールを抑える事が可能だという事がわかってきました。(1)

これまでお母さんと赤ちゃんが互いに見つめ合う事でオキシトシンが分泌されることは知られており、長年、女性特有のホルモンだと勘違いされていましたが、飼い犬と少し長めに見つめ合ったり、撫でたりした人間の体内に多くのオキシトシンが性別に関係なく分泌されたのを日本の研究チームが発見し、オキシトシンは異種間の関係や触れ合いでも放出される事が立証された今、その効果の可能性がドッグセラピーや、犬を職場へ連れていけるペット同伴出勤など、世界中の様々な場面で広げられているようです。

istock_78746235_medium赤ちゃんがいるとみんな穏やかになるように、ペットがいるとその場が和む

例えば、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ワークプレイス・ヘルス・マネージメントに掲載されたペット同伴で出勤した人、ペットを家において出勤した人、ペットを飼っていない人の3つのグループのストレスレベルを測る研究では、ペットがいない職場で業務を終えた人たちは1日を通してストレスレベルが高く、それに比べてペット同伴出勤のグループはストレスレベルが低かったことが分かりました。

また、別の研究ではペットがオフィスにいる会社の従業員の方が互いに信頼し、仕事上の協力関係がスムーズにいくという結果も出ており、クラレモント大学院大学のポール・ザック教授は、「犬が職場にいる事はただ『楽しい』や『いい』のではなく、利益や生産性の向上に大いに貢献する」と強く注目しています。

istock_14243844_mediumペットはただそこにいるだけで想像以上の効果を生み出す

実際、アメリカではグーグル、アマゾン、そしてアイスクリーム会社ベン・アンド・ジェリーズなどといった大手企業がペット同伴ポリシー導入に力を入れ始めており、2013年ではアメリカ企業全体のたった5%しかペット同伴出勤が許されていなかったのが、昨年2015年では8%にまで増え、緩やかながらも確実な伸びを見せ始めている事をうけ、米国ペット用品協会のCEOボブ・ヴィートレ氏は、今後の企業とペットの可能性について次のように述べています。

「多くの会社は、ペットがオフィスにいることで従業員が勤務中にリラックスできたり、集中力の向上や長時間働く事を望むといったポジティブな変化に気づき始めている。」

istock_60704362_mediumもの凄いスピードで成長する企業は効率と非効率のバランスをしっかりと保っている

グーグルは自社の企業行動規範に「グーグルのイヌ科の友人への思いは自社の企業文化に必要不可欠な要素」という概念をもとに、「犬ポリシー」を正式に含み、いつしか「ドッグ・カンパニー」と広く知られるようになりました。

またアマゾンでは近年、ペット同伴勤務リストへ登録されている犬たちの数は、2,000匹を既に越え、指定された同伴可能日には約30%の犬たちが飼い主とともにアマゾンオフィスへ出勤しているようで、どちらの会社をとってみても、ペットの同伴勤務リストへの登録が完了するまでに、「ワクチンやトイレのしつけ済みか」、「他の犬や人間との協調性があるか」などの審査を受けることが絶対とされ、それに加えて社内にドッグ・フリーゾーンを設けて、動物アレルギーを持つ従業員への配慮も欠かさないといったしっかりとした基盤が、ポリシーを支えている事がわかります。

istock_65958497_mediumアマゾンの広大なキャンパスには従業員2万人に対して、2,000匹の犬がいる

4人ひとグループで形成された12グループのビジネスパーソンたちがアイデアを出し合い、15秒のCMを架空の商品の為に制作するように指示され、コラボレーション能力を測る実験で、ミシガン大学は6グループには犬を同じ部屋へ同伴させ、もう6グループは犬なしで実験を行った結果、犬ありのグループはチームメイトに対する信頼感や結束感が、他グループより高かったといいます。

ハーバード・ビジネスレビューは社内での社員同士の信頼関係は複雑で壊れやすく、コンサルタントやクライアントとの信頼を築くより困難と説明しており、立証されているオキシトシンがもたらす効果を考慮すると、犬がオフィスにいることでビジネスパーソンの体内に分泌されたオキシトシンの働きが、絆形成、人同士の親和・信頼関係といった社会形成にも大いに寄与したと言っても過言ではないでしょう。

istock_89159979_medium細かいミスや感情のズレ、そして突然の経営の悪化など、従業員の信頼関係は本当に崩れやすい

また、ベン・アンド・ジェリーズのデザイナーとして勤めているリサ・ウェムホフ氏は、犬同伴出勤をしてからの自身が感じたポジティブな発見を次のように話しています。

「ペットを会社に連れて出勤して初めて、一番変わった事は、コンピュータから実際に離れて体を休めるようになった事なの。今までは肩こりがひどく医師からも休憩を頻繁にとるように指導をうけていたんだけど…」

ウェムホフ氏によると、医師から言われてもなかなか勤務中にコンピュータから離れる事ができなかったのが、ペットと同伴出勤をし始めてからというもの、午前、昼、そして夕方にデスクから離れて愛犬の為に短い散歩やスキンシップの時間を取る事が必要となり、結果、以前と比べて頻繁に休憩がとれているようになったようです。

istock_100392749_medium現在の職場環境は、何かしっかりとした理由がないと休憩を取ることすら、困難な状況にある

また、ペット同伴出勤するアマゾンのシニア広報担当マネージャーであるドリュー・ハーデナー氏は、愛犬ダルスのおかげで、毎日ダルスを撫でにくる多くの他の社員とコミュニケーションをとる事が日課となり、より広い人間関係を築く事ができていると言い、ペット同伴ポリシーが導入されてから会社のキツキツした雰囲気がカジュアルで働きやすい雰囲気になったと、このポリシーは多くのアマゾン社員から支持を受けています。

アメリカに遅れをとりながらも、日本国内でのペット同伴出勤は今、注目を集めていますが、実際、クラウドアプリケーションを提供する日本オラクルは、前ブッシュ大統領が執務室に自分の犬を連れてきている光景をテレビで目にしたことから発案し、社員として犬を採用、オフィスに出勤させるという社員犬制度を1991年に開始しました。

istock_89369955_mediumしつけさえしっかりすれば、ペットは職場を和ませる最高の役者である

オラクル社によると、第4代目の社員犬キャンディが社内を歩き回り、社員の近くに来ると皆コンピュータから少し離れ、撫でたりとスキンシップをとることで、仕事で疲れた脳をリラックスさせ、効率性をあげていると言い、またキャンディはクライアント側からも人気で、要請があれば商談などの場にも出席して営業上にもプラス効果があるようです。

その他でも、ペットとの同伴出勤を許可する試みが企業間で広がっているようで、「社員こそが最も重要な会社の資産である」と考えるネスレ日本では、人を大切にする経営を展開しているのはもちろんのこと、ペット同伴出勤といったペットフレンドリーな取り組みを行うなど、ペットオーナーのプライベートライフと仕事の両立を図る取り組みも充実させて、効果と利益に注目が集まっています。

istock_83187815_mediumペットとの生活が人生の質を大きく向上させる

日本でも疲れが蔓延してしまっている職場が目立ち問題視され、今のストレスフルな職場の環境を少しでもポジティブな方向へ変えていく為や、また一般的に困難と考えられる社員同士の信頼関係を築く為にも、他企業のペット同伴ポリシーから学べる事は大きく、その利益や可能性は計り知れないように思えます。

集中力、効率性の向上、ストレスや疲労感などの軽減に効果的な幸せホルモンを社員の体内でよく分泌させる事のできる社員にとって、働きやすい職場環境をいかに提供できるかで、今後、ジャンルを問わず会社の価値や評価が左右されていくのかもしれません。

blog_kokoro

~人が生きる奇蹟の組織創造を目指して~ 
ビジョン経営を実現する 株式会社ワールドユーアカデミー
 

1. 参照:高橋徳「自律神経を整えてストレスをなくす オキシトシン健康法(アスコム、2016年)Kendle Loc 263

別の記事を読む → http://blog.world-u.com/

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ワールドユーFacebook

関連記事

ページ上部へ戻る