面接で親の年齢が即答できない人は不採用「アインシュタインも感じとった、突き詰めた際にぶつかる科学を超えた“何か”」

Pocket

現在、アメリカでは慢心によって企業の年間売上高の6~15%も失われていると言います。たとえそれが6%としても、米フォーチューン500に上げられる企業にあてはめた場合、会社の利益を根こそぎ奪ってしまうほどの損失になりますが、これは数字や結果、もしくは理論やロジックなどの目に見えるものだけを重要視し過ぎたために日本の企業でも起こっている現象で、慢心は倒産の原因のナンバー1とも言われます。

ヒト・レニンの遺伝子解読に成功して世界に名を馳せ、80歳を迎えた今も心と遺伝子の研究に取り組んでいる筑波大学名誉教授の村上和雄さんは、あらゆる勢力や文明は、傲慢な心や態度から滅びていて、「つつしみの心」から進歩するのだと述べていますが、もしかすると私たち人間は、知識や情報ばかりを身に付けて、賢くなり過ぎたことで、自分の存在を支えている「目に見えないもの」に対して鈍感になってしまっているのかもしれません。(1)

iStock_000089302719_Large 知識・データが増え過ぎ、「目に見えるもの」しか信じない世界

何か一つの成果が出たり、発見があったりする際には、畑を耕し、種を蒔いて、肥料を与えるなど、莫大な準備の期間や試行錯語があるものです。村上さんも、仕事の成功は何万年もさかのぼるような先人の咲かせた花のところに咲き、加えて、親や学校、そして研究を支えてくれた人の力が合わさって、一つの成果を結ぶものと考えていて、偉大な発見をしたアインシュタインも湯川秀樹も、世界有数の科学者は一様に、きわめて謙虚であったそうです。

つつしみの心は、「自分の力などたいしたことはない」と考えるものですが、これは一見自分を卑下しているように見えて、実のところは、自分以外の力を借りていることを認識していて、「ありがたい」「おかげさまで」と力を得ていることに感謝することであり、自分が思っている以上の結果を生み出す考え方だとわかってきています。

iStock_000061328302_Large 本当の創造性とは謙虚な低い心にこそ宿る

たとえば、現代医学では手に負えない病気など、人の人生には、何か神のようなものを信じないと生きていけない、「祈ることしかできない」というときが必ずありますが、村上さんは人は無力だから祈るのではなく、祈りには思いもよらない力があるから祈るのだと述べています。(2)

アメリカで癌の自然寛解を経験した患者50人に、「なぜ、あなたは回復することができたと思いますか?」というアンケートが行われ、いちばん多かった答えは「祈りによって」で、その割合は68%を占めていたというように、祈りの力が、現代医学の理論では不可能であることも可能にしている例が、決して少なくなく存在することは確かです。(3)

iStock_000083167733_Large 目に見えない力は科学では証明できないことを実現する

村上さんによれば、科学には二つの面があり、一つは教科書や論文に書かれているような客観的、かつ論理的な観点でものごとを判断する方法で、これは通称「昼の科学」と呼ばれ、知性よりも感性、直感、インスピレーション、そして情熱のような「直接目に見えないもの」を重要視したもう一つの面は、「夜の科学」と呼ばれるそうです。

村上さんは、昼の科学というものをギリギリまで突き進めていくと、科学を超える壁に必ず突き当たるもので、偉大な発見は、夜の科学の方から生まれていて、理論では説明がつかないような「何か」を信じることによって、一般的な常識や理解を超えた、自分が思っている以上の力が発揮されるといいます。(4)

iStock_000080015459_Large科学を突き進めていくと、必ず「科学」を超える何かに行き当たる

村上さんは、知識や理論とは矛盾するような奇跡や、火事場の馬鹿力と呼ばれる力は、人間に本来備わっているものの、人がいつも使っている遺伝情報(ゲノム)は、全体の3%ほどしかないため発揮されておらず、心の持ち方の違いが残り97%の使われていない遺伝子のスイッチをオン/オフにする作用があるとして、次のように述べています。(5)

「良い遺伝子のスイッチをオンにすることができれば、私たちの可能性は飛躍的に向上します。40年近い研究生活の結論として、“人の思いが遺伝子の働き(オン・オフ)を変えることができる” と私は確信するようになりました。」

iStock_000010343226_Large心の持ち方が、まだ動いていない97%の遺伝子をオンにする

村上さんが、神様が好むのは、利口で頭の回転が早い人ではなく、「器の大きいバカ」「素直で正直なアホ」だと述べているように、一部の知性が高い人たちの中には、理論で説明できないような目に見えない力が発揮された事実があっても、それを「せん妄」だと片付けてしまい、信じることができず、知識や経験だけでものごとを判断してしまうため、使われていない遺伝子の97%は常にオフになったままで、それ以上の力を発揮することはありません。(6)

一方で、器の大きい素直な人の場合は、「絶対にできない」「絶対に助からない」といった状況の中でも、妙なプライドをなぐり捨て、常識を超えた世界に生きようと決意することで、「絶対にできる」と言い切ることができ、自分では信じられないほどの力を外部から吹き込まれるものなのだと言います。

iStock_000022236507_Large神様が好むのは、利口で頭の回転が早い人ではなく、素直で正直な人

昔の人が「お天道様が見ているよ」といって子供を育てていたというように、村上さんによれば、世の中には「宇宙銀行」と「地上銀行」があり、宇宙銀行は善い行いを貯金するところで、絶対に潰れないそうです。(7)

村上さんは幼い頃、祖母に「おまえたちのお年玉はみんな宇宙銀行に預けておいてやろう」と言われて、当時は「宇宙への貯金もいいが、こっちの貯金箱にお金を回してくれないかな」と不満を抱いたそうですが、研究者となってからは宇宙銀行の話を聞いて育ったおかげで、「一生懸命やれば、天が悪いようにはしないだろう」という確信を持って、ひたむきに研究を続けることができ、大きな成果を遂げることができました。

こういった経験から、祖母や両親への感謝の気持ちが生まれた村上さんは、自分が教えている大学の学生たちには、最初の月給は親が一番喜ぶものを買うために使いなさいとアドバイスしていると言っています。先人たちの思いや努力を感じることによって力が発揮され、ゴールを達成した人は、「先輩たちのおかげ、皆さんのおかげです」と心の底から言える、つつしみの心を持つことができるのかもしれません。

iStock_000087292807_Large目に見えない存在にもたれることで、力が生まれて成果を遂げ、感謝する気持ちが生まれる

自分が今ここに存在しているのは、祖先、両親、友人、そして先生など、様々な人の力があるからに他ならず、「目に見えない何か」につながるための一つの方法として、宮城大学名誉教授で公認会計士の天明茂さんも、自分の親や先祖とのつながりを自覚することの大切さを説いています。

天明さんは、人は誰でも親に恩を感じる心が原点にあり、それを自覚させてくれる家系図は、世界でたった一つの自分だけの教科書なのだとして、次のように話します。(8)

「“両親に生んでいただいた” “育てていただいた”という恩の自覚は、“おかげさま” “ありがとう”という感謝の気持ちに高まる。この恩や感謝の気持ちが大きくなればなるほど、“こんなにしていただいて……少しでもお返ししたい”という“恩返し”の心、いわゆる報恩の心が生まれる。」

iStock_000067134111_Large人は誰でも親に恩を感じる心が原点にある

1995年に孫正義さんからスカウトされた北尾吉孝さんは、社員面接で両親の年齢をすぐに回答できない人は採用しないと言い、横浜の注文家具を製作する秋山木工では、祖父母と一緒に暮らしている人、および家系図で先祖が五代以上わかっている人は無条件に採用するといいます。

秋山木工は、宮内庁や迎賓館などへ納めるほどの一流家具を製作することで知られていますが、代表の秋山社長が勉強も運動もできず、何の取り柄もなかった自分がここまで立派になれたのは、ここに至るまでの道をつくってくれた両親と、周りの方々に感謝したことで人間性が高まり、自然と技術が身に付いたからではないかと自分の過去を振り返ります。

iStock_000023706739_Large常に感謝することで心のエネルギーが湧き、技術の習得に集中できた

そういった感謝の念から、秋山社長は十代以上続いている家系図をいつも手元に置いていて、ご先祖様のおかげで今があることを忘れないようにしているのだということを、次のように話しています。(9)

「十世代前の300年前までさかのぼると、1,024人もの祖先がいます。その中の誰か一人でもいなければ、今の自分はいない。今を生きる自分には、運と才能のある遺伝子があるのです。」

「親に感謝できると、自分のことが大切に思えます。人のことも大切に思えます。仕事のことも、今ここで起きていることも、逆境でさえ、大切に思えます。命が輝いてくるのです。そして、心に大きなエネルギーが湧いてきます。 」

iStock_000045882092_Largeいま自分がこうしていられるのも、祖先の方々が歴史を繋いできてくれたおかげ

「目に見えない何か」を大事にする心は、八百万の神を信じてきた日本人には古来から宿っているものですが、キリスト教など一神教になじみの深い国の人々は、持ち合わせていない概念のようです。

ハフィントンポストの創業者、アリアナ・ハフィントンも、日本人が食事の前に「いただきます」と言って、目に見えないものに感謝するという考え方が大好きだと述べていますし、「ありがとう」という言葉にしても、「有り」「難い」、つまり、ありえないものがあることに対して深い畏敬と感謝の意味を込めて生まれてきた言葉です。(10)

ダライ・ラマ法王は、高い経済力と科学技術を保持しながらも、欧米のように自然と敵対するのではなく、自然に溶け込むようにして何千年も暮らしてきた日本人の精神が現在の世界には必要だとして、村上さんの手を握り、「21世紀は日本の出番ですよ」と述べたそうです。(11) 

目に見えない何かを信じるつつしみの心を持つことは、過去200年ほどの歴史において、成長や競争を基本とし、金銭的に意味のあることばかりを大事にしてきた経済のあり方に限界が見え始めている中で、新たな道を作り出す鍵なのかもしれません。

iStock_000019008658_Large21世紀は、「有難い」の精神を持つ日本の出番

一般的に、ビジネスという観点から考えれば、目に見えないもの、数字で表せないもの、そして理論的に説明できないものなどは、ロジック・統計を主軸に考える経営コンサルタントの方々にとっては、少し理解に苦しむ内容かもしれません。しかし、多くの日本企業がグローバルという視点から、精神的な観点を考慮しない欧米の「目に見える経営」を取り入れ、短期的には良く見えても、長期的観点から考えれば、状況は日々悪化してしまっています。

iStock_000070140747_Large何か大きなものに、守られている感覚

恐らく、今後自分の力では何をやっても上手くいかなくなると、私たち日本人は、「日本という国は今までどうやって成功してきたんだろう」と自分自身について考えるようになってくることでしょう。

そういった過程を経て、日本人は再度、目に見えないものに身をゆだねることになっていくことが期待されますが、食事の前に「いただきます」と手を合わせる、仏壇にお祈りをするなど、眠った97%の遺伝子をオンにする方法は意外と近くにあるようです。

blog_kokoro

~人が生きる奇蹟の組織創造を目指して~ 株式会社ワールドユーアカデミー 

引用元)
1.村上和雄「人間 信仰 科学」(天理教道友社、2016年) p.262 2.村上和雄「奇跡を呼ぶ100万回の祈り」(ソフトバンククリエイティブ、2011年) p.28 3.村上和雄「奇跡を呼ぶ100万回の祈り」(ソフトバンククリエイティブ、2011年) p.59 4.村上和雄「人間 信仰 科学」(天理教道友社、2016年) p.9 5.村上和雄、宮島 賢也 「どうせ生きるなら”バカ”がいい」(水王舎、2015年) p.75 6.村上 和雄「アホは神の望み」(サンマーク出版、2008年) Kindle 7.村上 和雄「アホは神の望み」(サンマーク出版、2008年) Kindle 8.天明茂「なぜ、うまくいっている会社の経営者はご先祖を大切にするのか」(致知出版社、2015年) P4,24 9.秋山 利輝「一流を育てる 秋山木工の職人心得」(現代書林、2013年) Kindle 10.村上 和雄「アホは神の望み」(サンマーク出版、2008年) Kindle 11.村上 和雄「アホは神の望み」(サンマーク出版、2008年) Kindle

別の記事を読む → http://blog.world-u.com/

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ワールドユーFacebook

関連記事

ページ上部へ戻る